現代新書
データ分析を武器にする人や組織になる方法とは
『会社を変える分析の力』著者・河本薫氏インタビュー

データ分析が重要なのはよくわかるけれど、どうやってやればいいかわからない。せっかく高価な分析ツールを買って、専門家を雇っても、効果が出ているかどうかがわからない。そうした疑問や悩みを持っている会社は多い。
そんなモヤモヤを一気に解消してくれるのが、7月18日に刊行された
『会社を変える分析の力』(講談社現代新書)。著者の河本薫さんは、大阪ガス株式会社でビジネスアナリシスセンターの所長をされている人だ。現在大注目のデータ分析の第一人者ということで、講演会でも引っ張りだこの河本氏に本書の出版の意図などを伺った。

社内に分析組織をつくる意味

──今回『会社を変える分析の力』という本を出されたわけですが、まずおもしろいと思ったのが、河本さんが、大阪ガスでビジネスアナリシスセンターの所長をされているということです。なぜ大阪ガスなんだろうと正直疑問に思いました。

河本 ビジネスアナリシスセンターという組織は私がつくったわけではなく、代々の先輩方が礎を築いてきて、それを引き継いで、いま私が所長をしているという感じです。私以外に8人の分析者がいます。

がんばって統計分析を勉強したのに、分析力が向上した実感がない人にこそ、手に取っていただきたい『会社を変える分析の力』

 ガス会社ですから20年くらい前から、ガスの需要予測のデータ分析をする部隊はあったんです。そこから始めて、自分たちが培ってきた統計分析の力を他にも使えるんじゃないかということで、ほかのことをやり始めたというのがスタートなんです。

 いまのように社内の各ビジネス部署の問題解決に役立つような分析を手がけるようになったのは、求められている分析の課題に満足せず、分析があんなことにも使えるんじゃないか、こんな課題を解決できるんじゃないかと、それぞれの分析者がチャレンジ精神をもって取り組んできたからだと思います。

 これは社内外から聞こえる声ですが、大阪ガスという会社は、もともとチャレンジ精神を大切にするという社風があるんですね。この社風が、私たちの組織に関しても追い風になったというのはあります。

──すると、河本さんなど分析者たちが「こんな分析ができるんじゃないか」「あんな分析ができるんじゃないか」とそれぞれのビジネス部署に働きかけていったということはあるんですか?

河本 そうです。でも、初めはそうではありませんでした。最初は「来るものは拒まず」で分析を受託するという形でやろうと思っていました。しかし、そうした仕事のスタンスを取っていると、だんだん分析者側が便利屋になってくるんですね。いまどきどんな会社でもデータを扱わないところはないので、「データ分析をやりますよ」というスタンスでいると、「こんなことやって」「あんなことをやって」と気がつけばデータ分析代行業という形になってくるんです。でもそうなってくると、せっかくデータ分析組織として社内で立ち上げているのに、主体的な力を発揮できなくなる。お手伝い部署になってしまう。

 やはりそれではいけないだろう、むしろ分析はやり方によっては、もっとすごいことができる、会社をイノベーションできるコアな部隊にならないといけないと気がついたんです。そこでいままでの受託するだけの組織から提案する組織に10年くらい前から徐々に変えていったんですね。

──徐々に変えていくうえで、分析者に求められる新たな能力というのはあったんでしょうか?   

河本 新たな能力というより、より必要な能力と言ったほうが正しいと思いますが、とくに重要なのが、本書の「データ分析でビジネスを変える力」という章でも書いた「見つける力(問題発見力)」です。それぞれのビジネス部署の人に対し、こちらから「こうしたデータをお持ちでしょう。そのデータを使うといまの業務をこれだけ改善できますよ」と働きかけてゆく。そのためにはそれぞれのビジネス部署の課題を見つけられなければいけない。

──たしかに「見つける力」の重要性は、今回の本の中でも繰り返し書かれていますが、会社の中にはそれこそ営業、マーケティング、品質管理などなど、いろいろな部署がありますよね。そうすると、ほとんどの場合、自分の部署の仕事のことはよくわかっていても、他部署の仕事のことまではわからないと思うのですが、分析者は、どのようにして他部署の課題を「見つける」のでしょうか?

河本 ええ、おっしゃる通り、たしかに同じ会社のなかでも、他部署のことなんて何もしなければ何もわかりませんよね。そうなると結局は他部署の人とコミュニケーションを取るしかないんです。でもそれはそんなに簡単ではない。当然みんな忙しいですし。

 ですから最初は他部署にいる同期の話を聞くとか、相手の懐に入り込むためにあえて便利屋的仕事を請け負うというところから始めました。そのうえでその部署の人に「どんなことで困っているの?」「いまどんなビジネス課題があるの?」といったことを徐々に聞き出していきます。

 結局「継続は力なり」なんですよね。10年以上社内でこうした仕事を続けていると、社内の各部署に知り合いもたくさんできますし、そうなると組織横断的な課題も見えてくるんです。それぞれの部署の人たちは自分の部署の仕事に関してはいちばん詳しいでしょうが、他部署のことには詳しくないので、これが私たちにとっての強みになる。

 また別の意味でも「継続は力なり」ということがあって、10年前から続けていると、当時は分析の仕事を一緒にしていたビジネス部署の担当者が、いまでは部長やマネージャーになって社内でもある程度の影響力を持つようになっています。すると、「ビジネスでこんな問題があるんだけど、分析で課題解決ができないだろうか」というような従来の便利屋的な仕事ではない、ビジネスを変革するようなオファーがどんどんビジネス部署から出てくるようになってきた。

 だから講演会でも、多くの人からどうすれば提案型の分析ができるのかと聞かれるのですが、たしかに一朝一夕でできるような簡単なことではないですよね。

──話を伺っていると、分析だけではなく、社内コンサル部署のような気がしますね。

河本 社内コンサル部署と言われると誤解を招くかもしれないのですが、ゴールはあくまでも「データ分析でビジネスを変える」ことなので、そういう意味ではコンサルに近いかもしれませんね。

この続きは、プレミアム会員になるとご覧いただけます。
現代ビジネスプレミアム会員になれば、
過去の記事がすべて読み放題!
無料1ヶ月お試しキャンペーン実施中
すでに会員の方はこちら