「講座: ビジネスに役立つ世界経済」
【第10回】 ~アメリカでIT革命の再来はあるのか~

〔PHOTO〕gettyimages

 当連載の第7回「『出口政策失敗の教訓』を考える」では、今回の量的緩和からの出口政策の事例として、1936年半ば以降という戦前の米国の経験を振り返っている。そこでは、「早すぎる出口政策」が、米国経済を再び景気低迷に陥らせてしまう懸念があること、そして6月19日のFOMC後のバーナンキの記者会見(早期の出口政策実現に向けての積極的な発言)は、「早すぎる出口政策」のリスクを高めたことについて、やや警戒感を強めるトーンで言及した。

 米国経済は、確かに着実に回復し、リーマンショック以前の「正常な」経済状況に戻りつつある。また、最近の雇用環境の改善や住宅市況の改善をみると、そのペースは、徐々に加速しつつあるようにも見える。しかし、家計や企業のデ・レバレッジ(負債削減を最優先した経済行動)や銀行貸出の低迷は続いており、「危機を脱したばかりの『病み上がり経済』という状況が続いている」というのが、筆者の考えである。

 この段階ではまだ不透明だが、市場のコンセンサス通りに、FRBが9月に債券購入額の削減を始めた場合、その後の米国経済に与えるマイナスの影響について考えるべきであるし、株式投資等のリスク資産も売り時を考えなければならないと考えている(1936年、及び2006年の日本の出口政策後の株式市場の推移を考えると、出口政策を始めたからといってすぐに株価が調整局面を迎える訳ではなく、下落局面の到来まではある程度のタイムラグをともなう。しかもその間、逆に株価は上昇ペースを速める可能性があるため、売り時の判断は極めて難しい)。

 米国の経済政策において重要な教訓を残した1936年は、世界大恐慌による深刻なデフレを克服するためのリフレーション政策が発動されてから5年が経過し、リフレーション政策の効果が目に見えて発現し始めた年であった。

2通りのシナリオが描かれる2013年の米国経済

 そして、リーマンショックから5年が経過した今年も、1936年同様、経済の正常化が実現する見通しが、ある程度立ち始めた局面である。危機対応の量的緩和発動から5年が経過したという時間軸の一致もあるが、経済状況も驚くほど似ている。その意味で、この局面での出口政策の実施は、1936年から1937年にかけての経済状況の再現になるのではないかと強く懸念する。

 一方で、別のシナリオも描ける。それは、「この2013年という年が、1993年後半、もしくは1994年前半に相当する」ということである。もう少し分かりやすく言えば、1993年後半から1994年前半にかけての米国経済は、1990年代後半以降、米国経済を長期低迷させたS&L危機(地方の不動産バブルの崩壊によって、中小の地方金融機関の経営破綻が相次ぎ、米国が一種の金融危機的な状況に陥ったことを指す)を、低金利政策と財政出動による不良債権処理によって、ようやく克服しつつある局面であった。

 当時のFRBの金融政策は、量的緩和政策ではなかったが、政策金利であるFF金利をインフレ率以下に抑え込む「実質ゼロ金利政策」を採用していた。FRBは1993年後半から、この「実質ゼロ金利政策」からの脱却を志向し始めた。実際の利上げは、1994年に入ってからであったが、近い将来の利上げを予想し、米国債券市場で長期金利が急騰した。長期金利の急騰とともに、緩やかに上昇していた米国株式市場も調整を余儀なくされた。

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