「シェールガス革命」は必ずしも日本に"バラ色の未来"をもたらさない、という厳しい現実
シェールガスを含む頁岩 〔PHOTO〕gettyimages

文/ 野神隆之(JOGMEC 石油調査部上席エコノミスト)

 最近はやや落ち着いた感があるが、一時日本は空前の"シェールガス革命ブーム"に沸いていた。シェールガス革命により天然ガスが世界中に溢れるとともに販売と値引き競争が発生、価格が大きく低下することで世界が大きく変化する、と。その天然ガスによって近々、日本も恩恵を受け経済が大きく発展する、というようなイメージがあらゆるメディアを通じて人々の頭に刷り込まれていった。

 東日本大震災後、原子力発電所の稼働停止を受け、その代替燃料として高価な液化天然ガス(LNG)を輸入しなければならなくなった結果、2011年度の貿易収支は統計として比較できる1979年度以降で最大の赤字となった。そんな日本にとってシェールガスは、かように高いエネルギーコストを即座に、かつ大幅に引き下げ、経済にバラ色の未来をもたらす切り札になると、人々の期待を一身に集めたのである。

 筆者はその当時、自ら収集した国内外の天然ガス等のエネルギー市場及び産業情報をもとに分析を実施した。その結果、果たしてシェールガス革命は日本経済にとってそのようなバラ色の未来をもたらすものなのかどうか甚だ疑問である、という結論に至っていたし、そのような見方は楽観的過ぎるとしてしばしば警告を発してきたところである。

世界のエネルギーについての現実

 ただ、当時はバラ色のイメージに勢いがつき過ぎてしまっていた。また、イメージが派手であればあるほど、必ずしも適切とは言えない分析が人々の心を捕えてしまうものである。そのような状況で、筆者のように「シェールガス革命は日本に必ずしも恩恵をもたらすものではない」と言ったところで、事態はあまり変わらないであろうし、その深刻な事態を打開するためには、場合によっては痛みを伴う努力をしていかなければならない、と忠告したとしても誰も耳を貸さないものである。

 しかしながら、正しい認識を持たずして楽観視を続けることは、後々後悔してもしきれない状況を生み出す恐れがある。特に、世界経済がダイナミックに連動し、いやがうえにも外国企業との競争に晒される今日においては、そのような誤解は経済発展にとって致命傷ともなりかねない。石油や天然ガスを含めたエネルギー資源の開発には早くても数年、場合によっては数十年の月日を要するとあっては、なおさらである。

 こうしたことから、読者の皆様に耳の痛い話かもしれないが、筆者は敢えて現時点でのシェールガス、そしてシェールオイル(日本以外では「タイトオイル」と言われている)に関する現実をお届けしたいと思っている。これから数回に分け、議論を進めていこうと考えているその内容は、ある意味で「激辛」かもしれない。しかしそれは、世界のエネルギーの現実を知ってほしい、そして真剣に考えてほしい、という筆者の切なる願いをお伝えしたいからに他ならない。

 シェール資源とは何か、その開発・生産方法やコスト、賦存量と生産状況は---。シェール革命によって何が変わったのか、そしてそれは日本にどのような影響を及ぼしているのか---。さらにはシェール資源の生産が今後どのようになると考えられているのか、それが日本に恩恵をもたらすのかどうか、そして予想される将来に対して我々はどう対処すべきなのか---。こういった様々な具体的トピックについて、筆者の考えをできる限り平易に述べることとしたい。

 なお、読者に理解しやすいという点を優先させる関係上、厳密性が犠牲になる場合があるが、それについては、筆者が執筆した他のレポート(大半は筆者が勤務しているJOGMECホームページに掲載している)を御参照いただきたい。それでは、しばしの間御付き合い頂ければ幸いである。

野神隆之 (のがみ・たかゆき)
独立行政法人 石油天然ガス・金属鉱物資源機構(JOGMEC)石油調査部上席エコノミスト。早稲田大学政治経済学部経済学科卒業。米国ペンシルバニア大学大学院修士課程およびフランス国立石油研究所付属大学院(ENSPM)修士課程修了。通商産業省(現・経済産業省)資源エネルギー庁長官官房国際資源課(現・国際課)、国際エネルギー機関(IEA)石油産業市場課等に勤務の後、石油公団企画調査部調査第一課長を経て、2004年より現職
この続きは、プレミアム会員になるとご覧いただけます。
現代ビジネスプレミアム会員になれば、
過去の記事がすべて読み放題!
無料1ヶ月お試しキャンペーン実施中
すでに会員の方はこちら