ドクターZは知っている

ハローワーク改革
鍵を握る村木厚子事務次官

2013年07月14日(日) ドクターZ
週刊現代
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〔PHOTO〕gettyimages

 ハローワーク(公共職業安定所)が、組織の存亡をかけて必死になっている。ハローワークは各都道府県労働局管内に設置された厚生労働省の出先機関で、職員は国家公務員。県や市町村でもハローワークと同じような職業紹介を行っているところもあるので、二重行政のシンボルだ。

 国のハローワークで約1万2000人もの職員がいるのは、非効率。これを地方に移せれば地方分権の一歩といえる。そこで安倍政権は、ハローワークを地方分権・出先機関改革のターゲットとしている。

 そうした中、日経新聞に、ハローワークの求人情報を地方自治体に開放するとの記事が載った。求人情報は民間にも開放するが、ハローワークの全面的な地方移管は見送るという。一見すると国から地方への権限移譲のように読めるが、形だけの「開放」にも映る。どう考えればよいのか。

 ハローワーク改革に対して、厚労省は徹底抗戦してきた。「職安事業は国が行う必要がある」とした上で、根拠として持ち出すのが「国が公務員により運営される全国規模の職業安定機関を組織しなければならない」という国際労働機関(ILO)の取り決め。しかし、ILOの取り決めは、国として職安機能があればよいという趣旨で、担い手は地方政府でも構わない。その証拠に米国などは地方に移管している。

 しかし、そこは官僚のロジック。厚労省は、ドイツでは国が担っているなどと〝好都合の例〟を出してくるだろう。実際、過去の地方移管論はこうした屁理屈で乗り切った。

 ハローワークが多くの求人情報を集められるのは、ハローワークで求職する人が多いからだ。その理由は、一定期間求職すれば、雇用保険が得られるから。このカネが肝で、厚労省は求人情報を地方自治体に開放しても、雇用保険給付の事務は決して手放したくない。

 雇用保険のカネは労働保険特別会計だ。この「米びつ」が、厚労省のうち旧労働省OBの生計を守っている。たとえば、悪名高い京都の『私のしごと館』に使われたカネの出所は、労働保険特別会計。組織に忠実な厚労省官僚ならば、手を着けられない聖域といえる。

 最終形としては、労働保険特別会計を地方に分割譲渡したうえ、ハローワークを全面的に地方移管し、1万2000人の国家公務員を地方公務員化する―つまり、ヒト、モノ、カネを地方移管すべきだ。つまり、ハローワークの情報を地方自治体や民間にも開放するというのは一見いいことのようだが、厚労省はしたたかに利権を確保、ハローワークの完全地方移管にはならないように、これまでの厚労省スタイルを踏襲している。やはり官僚の壁は厚いといわざるを得ない。

 では今後、安倍政権がどこまで厚労省の牙城に切り込めるのか。鍵は村木厚子事務次官だろう。不正郵便事件で冤罪逮捕されたが、無罪になった人。旧労働省出身で仕事熱心で優秀な官僚だが、出身母体の利権をぶっ飛ばすには、いい人すぎる印象もある。

 彼女の夫は同期入省の旧労働省官僚である。今は、役員出向という形で独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構の理事長代理になっている。この独法は旧労働省の天下り先。この役員出向(現役出向)という形態は、天下りではないとして、民主党政権下からできた仕組みだが、独法役員を公募にすべきところを「抜け道」にしているとの批判もある。村木氏は旦那に迷惑をかけるようなことができるだろうか。

『週刊現代』2013年7月20日号より


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