特別読み物 切り捨てられた男ブランコが心に誓ったこと
中日を追われ、DeNAへそしてホームラン量産

 まだ折り返し地点にも到達していないのに、25本もアーチをかけた。そのうち4発は場外へ。猛打爆発の裏には、知られざるドラマがあった。'13年夏、新天地で咲く男たちのドキュメントをお届けする。

生まれ変わった人間扇風機

 その一打に絶好調の秘密が凝縮されていた。

 6月23日のタイガース戦。ゴールデンルーキー・藤浪晋太郎が投じた155kmの真っ直ぐをDeNAの主砲・ブランコ(32歳)のバットが一閃! 白球は弾丸ライナーでライトスタンドに飛び込んだ。

「66試合を終えた時点で打率3割3分8厘、25本塁打、67打点と猛打爆発。三冠王に一番近いのがブランコです。中日時代から規格外のパワーは有名でしたが、打率は2割5分前後と確実性に欠けていた。それがDeNAに移籍してから、見事に修正された。レフトに引っ張るだけじゃなく、藤浪から打った一発のように、センターから右にホームランが打てるようになり、打率がグッと上がったのです」(スポーツ紙デスク)

 4年在籍した中日に彼が切り捨てられた理由がまさに、確実性の低さだった。昨シーズン終盤、ブランコの代理人と中日の間で残留交渉が行われたが、決裂。

「心は中日にある」

 そう語って残留を望んだブランコに高木守道監督が浴びせた言葉は「ブランコは要らない」「穴がはっきりしている。三振、三振の人間扇風機だ」と辛辣だった。

 レッドソックスがドミニカに作ったベースボール・アカデミーの出身ではあったが、まったくの無名選手。そんな自分を見出してくれた中日にブランコは恩義を感じていた。だが、球団側の評価は彼の熱意に比して、高くはなかった。

 中日を去ることになったブランコを「より高い年俸を求めて球団と衝突した結果」と批判する声も球団関係者からは上がっていた。

「彼のことを『裏切り者』と言う人もいるけど、それは違う。確実性が低く、故障がちで去年は96試合、一昨年は78試合の出場にとどまった。球団内での評価は下がる一方でした。ブランコ本人はまだやれると思っていたけれど、中日さんが再契約するより、新外国人を獲る方針を取った、ということでしょう」(在京セ・リーグ球団の編成担当)