石油政策の軌道修正は時代の要請 ~合理化神話から脱却すべきとき
文/ 石川和男(政策家/社会保障経済研究所代表)

昨年は、日本を代表する製造業の凋落が相次いだ年であった。半導体関連や電機メーカーの一部には、経営危機に陥る企業まで出てきた。グローバル市場で活躍している日本企業も多く存在する反面、近年の新興市場国の企業の台頭により、往時の勢いを完全に失い、衰退した企業も多くなっている。

 そうした衰退には様々な原因が挙げられているが、単純に考えると、自由競争市場における競争に敗北したということであろう。自由主義経済では、消費者にはより低廉で優れた製品やサービスを購入する選択肢が多くある。企業は消費者の目にかなうよう、ライバル企業よりも優れた製品やサービスを作り出す努力をする。この競争、切磋琢磨こそが、イノベーションを促す源泉の一つである。

 2013年6月14日、政府から「日本再興戦略」が発表された。副題に「-JAPAN is BACK-」とあるように、日本経済の再生、デフレからの脱却を意識した日本の成長戦略である。この中で、今後5年間を「緊急構造改革期間」と位置付け、日本経済の3つのゆがみ(「過小投資」、「過剰規制」及び「過当競争」)の是正に向けた取り組みを進めるとしている。

 安倍政権が、これら取り組みを具体的にどのように推進していくのか、今後強い関心を持ちながら見ていく必要がある。

 しかし、危惧すべき点もある。政府が民間の企業活動に対して過度に介入するのではないかということだ。この「日本再興戦略」の中には「事業再編・事業組換の促進」という項目がある。素直に解釈すれば、政府が主導して各産業界の再編を促していくようにも受け取れる。

 企業の再編にまで政府が首を突っ込み、産業界に大きな影響力を持ちたいのだろうか。だとしたら、それには大きな違和感を覚えるし、反対である。自由競争が制限され、結果的に個々の企業活動が縮小する可能性があるからだ。

規制の副作用

 産業界に対して過度の影響力を持つ規制の一つとして、エネルギー供給構造高度化法(以下、「高度化法」)が挙げられる。高度化法とは、非化石エネルギー源の利用及び化石エネルギー原料の有効な利用を促進することで、エネルギーの安定的かつ適切な供給の確保を図ることを目的とした法律である。

 その中で、石油事業者については、石油の有効利用をより一層進めるため、設備面の対応として、「重質油分解装置の装備率」(=「常圧蒸留装置の処理能力」に対する「重質油分解装置の処理能力」の割合)を高めることにより、投入する原油から重質油分解装置を用いてより多くの燃料製品を取り出すことが必要とされた。この「重質油分解装置の装備率」に目標値が設定されたのだ。

※) 重質油分解装置の装備率 = 重質油分解装置の処理能力 ÷ 常圧蒸留装置の処理能力

 国際的に見ても、日本の重質油分解装置の装備率は10.2%と、欧米(19.5%)やアジア主要国(韓国、台湾、シンガポール: 19.1%)よりも非常に低い水準にある。

 これはすなわち、通常の石油精製能力(常圧蒸留装置の能力)に対する高度分解による石油精製能力(重質油分解装置の能力)の割合を更に高めようとするものであり、達成のためには、通常の石油精製能力を下げるか、高度分解による精製能力を上げるかの2つの方法がある。

 しかし、石油産業全体の規模が縮小していくことが見込まれる中で、経済産業省が通常の石油精製能力の削減を目的に高度化法を利用しようとしていることは衆目の一致するところとなっていた。事実、経済産業省は通常の石油精製能力の削減しか認めないだろうということが多く報道されていた。

 実際に石油業界最大手であるJXホールディングスや出光興産は、常圧蒸留装置を廃棄することで重質油分解装置の装備率に係る目標値を達成する予定である。これは実質的な生産調整であり、結果的に石油会社間の競争が制限されることになるので、業界延命装置のような機能を持つようになった。

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