楽天が三菱UFJモルガン・スタンレー証券のアナリストを"出禁"にした件について
〔PHOTO〕gettyimages

 先日、楽天から以下のようなプレスリリースが出て波紋を呼んでいます。

●「三菱UFJモルガン・スタンレー証券のアナリストレポートについて

 これは三菱UFJモルガン・スタンレー証券のアナリストレポートに対して楽天が疑問を呈し、その分析手法についていくつかの具体例をもって反論を述べたものです。

 上場している会社にはさまざまなアナリストが訪れ、その会社を独自に分析したアナリストレポートを発表します。そしてそれは個人投資家や機関投資家の目に触れ、その企業の経営状況の判断材料となり、内容によっては株価を動かすこともあるのです。

 したがって、事業会社はアナリストレポートの内容に敏感になります。よい内容が書かれていれば株価の上昇にもつながりますが、逆に否定的な内容が多く書かれていれば株価が下がってしまう可能性があるからです。株式会社にとってアナリストレポートというものは、とてもインパクトのある記事なんです。

 楽天のプレスリリースの最後には、以下のような文言がありました。

 以上に鑑みて、当社としては同氏による過去及び将来のレポートは当社への投資判断の一助とはなりえないと判断しており、投資家の皆様におかれても参考とされないようお勧め致します。また、当社は今後同氏の取材については一切お受けしません。 

 出ました、「出入り禁止」宣言です。これが投資の世界で非常に大きな話題になりました。なぜなら、プレスリリースを出してアナリストレポートの内容に反論し、かつ出入り禁止まで宣言する、というのは極めて特異なことだからです。

 過去にも、レポート内容をめぐって事業会社が訴訟を行うケースはありました。しかし、今回のようなケースは前例がなく、業界内ではかなりの衝撃をもって受け止められました。金融関連の専門家たちの間でも本件についてツイッターやフェイスブックで多くのコメントが飛び交い、それはそれは盛り上がりました。

 いくつかの論点があります。

1)事業会社が特定のアナリストレポートに対して反論を述べることができるのか
2)特定のアナリストを名指しで批判し出入り禁止を公言することは、資本市場にとってどのような意味があるのか
3)楽天の企業価値がこれで向上するのかしないのか

 まず思い付くのはこのようなことです。他にもいろいろありますが、ここではこの3点に絞って考えてみましょう。

1)事業会社が特定のアナリストレポートに対して反論を述べることができるのか

 この問題に対しては、おそらく業界の中でも反論を述べることができると考えている人が多いと思われます。なぜならばアナリストと会社側での真摯な議論はおおいにやるべきであり、実際、実務上でも丁々発止のやりとりが行われています。実務的には会社側が気の毒に思われることもあります。

 自分で会社を経営したこともないアナリストが、ベテラン経営者に向かって、思いっきり上から目線で「指導」したり「批判」したりすることは、しばしばあることです。ベテランの社長が目頭をひくひくさせながら、どうにか怒りを抑えて冷静に応対するというシーンは割と日常茶飯事なんです。言い方もあるのになあ、と私も苦笑してしまうようなことがよくあります。もっとも、経営者や経営陣に厳しい指摘をするにしても、心の中にはリスペクトが必要だと思います。

 今回のケースがどうだったのかはわからりませんが、アナリスト側が穏便なやりとりをして担当者と心の交流ができていれば、このようなプレスリリースは出されなかったかもしれません。実際のやりとりを見ていないので、感情的な部分も含めた行き違いがあったのかなかったのかは、私にはわかりませんが・・・。

 事業会社がアナリストレポートに苦情を言うケースは多くあります。それは今回のようなプレスリリースではなく、水面下の対話で行われることが多いです。会社側とアナリスト側でかなり激しいやりとりが行われます。それぞれプロなのだから大いにやるべきですよね。

 でも、反論するのはいいとして、それをプレスリリースという形で出すべきなのか、という点については議論が伯仲しています。法的にいえば、アナリストに対して反論を述べたり出入り禁止にすることは、特に問題ないと思われます。実際、証券取引所も今回のプレスリリースについて楽天側に注意をしている様子はありませんし、たぶん今後もしないでしょう。

 とはいえ、アナリストの意見に対して文書の形で反論するということは、多様な意見を戦わせて企業の様々な側面を伝え、それを参考にしながら価格が決定されていく、という市場機能そのものを楽天サイドが信じていない、というようなメッセージを市場に与えているように思います。

 出入り禁止ということも、企業サイドが当該証券会社や本人に対して直接通告するのが普通であって、それを文書で公開するというのは極めて異例です。だから今回の出来事には業界関係者もとても驚いているのです。

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