ドイツ
人類史上もっとも多くの難民が世界中をさまよう時代
〔PHOTO〕gettyimages

 先週に続いて、難民の話をもう一度。

 バイエルン州で亡命申請者、約50人が、先々週の週末、ミュンヘン市内のリンダーマルクト(牛の市の意)という場所にテントを張って、ハンストを始めた。彼らの出身地は、イラン、アフガニスタン、エチオピア、シリア、そしてシエラレオネなどだという。

 彼らがどうやってバイエルン州までたどり着いたかはまちまちだが、ほとんどは合法ではないはずだ。このままドイツに滞在することはできないので、まず、難民収容所に保護され、滞在が認められるかどうかの審査を待つ。もちろん、そのあいだ、働くことはできない。

 このたび、抗議の座り込みがエスカレートして、ハンストになった。25日の火曜日からは水分も拒否し、昏睡状態に陥って病院に担ぎ込まれる者、入院を拒否して生死の間をさまよう者も出始めた。しばらく食べなくても人間は死なないが、水分を摂らないと一週間はもたない。

 彼らの要求は、難民収容所の待遇改善、つまり、部屋や食事をもっと良くすること、ドイツ国での移動の自由、そして、政治亡命者としての速やかな認定である。メルケル首相に宛てた公開書簡で彼らが主張しているのは、「我々が祖国で暮らしていけないのは、列強の植民地政策と搾取が遠因である。よってドイツ政府が、我々の亡命申請を裁判所で審査するのはおかしい。すべての人間は、豊かに、平和に暮らす権利がある」というもの。

 要するに、すぐに政治亡命者として受け入れろということだ。

難民の問題はハンストでは解決しない

 バイエルン州の亡命申請者は、かなりラディカルだ。去年の秋にも、50人が抗議のため、ヴュルツブルクからベルリンまでの500キロを行進するという手に出た。やはり、移動の自由やら、収容所の待遇改善、そして、労働許可を求めてである。バイエルン州を離れることは違法だが、それをあえて破り、ベルリンまで行ったわけだ。

 バイエルン州は、メルケル首相のCDU(キリスト教民主同盟)の姉妹党であるCSU(キリスト教社会同盟)が治めている州で、かなり保守的な土地柄である。つまり、難民を歓迎しない傾向はあるが、だからといって、ここの難民収容所の待遇が、他の州と比べて特別悪いかというと、そんなことはありえない。そもそも、難民の対応に困り果てているのは、どの州も同じで、皆、少ない予算でどうにかこうにかやっているのである。

 イタリアなど、アフリカの難民が続々とボートで漂着する国は、自分の国で面倒が見きれないと、さっさとドイツへ送り込む。EUにそういう規則があることは確かだが、送り込まれるドイツもほとほと困っている。イタリアとドイツの間に陣取るスイスはEUではないので、招かれざる客が入ってこないよう、国境の管理は万全だ。

 ただ、今回のハンストでは、バイエルン州もミュンヘン市も、こんなところで死人が出てはそれこそ大変だと、かなり緊張が高まった。28日の金曜辺りからハンストを止めさせようとする試みが強められ、土曜日の夜には、長老政治家が、難民側と州政府の間に入って調停を試みた。しかし、深夜に至ってすべて破たんし、結局、日曜日の未明に警察が介入して、キャンプは解体された。

 そのとき、ハンストをしていた人たちは弱っていたので、抵抗せずに担架で病院に運ばれたのだが、現場に詰めていた支援グループが警察と衝突した。ドイツには、難民の権利拡張を支援する政党や団体が十分すぎるほどある。今回のハンストも去年の行進も、もちろん、支援団体あってこその行動だ。

 その彼らが、難民が病院に搬送されるのを阻止しようとしたというが、こうなると、誰のために行動しているのかが不明だ。自分たちの政治的目的達成のためには、少々の犠牲は致し方ないとでも思っているのだろうか。ハンストをしていた人たちの中には、子供が3人含まれていたというから、ほとんど犯罪に近い。いずれにしても、ひとまず6月30日にハンスト騒ぎはお開きとなったが、難民の問題はもちろん何も解決していない。

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