田原総一朗×竹中平蔵対談【中】「『決められない政治』より決められない日本の経営者こそ、この国をダメにした元凶だ」
田原 総一朗

竹中: いやいや、メディアはほとんど採り上げませんね。それはよくわかりません。メディアがなぜ採り上げないのか、ぜひ聞いてみたいと思いますけどね。

田原: メディアもそうなんだね。つまり、社長に対してノーと言えないんだ?

竹中: まあ、株式会社のなかで最もガバナンスが効いていないのはメディア企業かもしれませんね(笑)。だって、上場もしていないところが多いわけですし。もう1つ、新陳代謝が進まない理由として、実は労働者がいるわけですよ。もちろん、人のクビを簡単に切ってしまってはいけないんですが、リストラをして新しい職場に行ってもらったほうがいい場合もたくさんあります。ところが日本では解雇のルールがすごく不明確で、1970年代の判例に依存しているから、よくわからないところがあるんですよ。

田原: この問題についてはちょっと誤解もあった。つまり、産業競争力会議で竹中さんたちが解雇の自由化を謳っている、と。そこを聞きたいんだけれども、それは言ってみれば雇用の流動化ですよね? ダメな企業はダメなので、ダメな企業から成長する企業へ従業員が移っていくのがいいんですね。これをやろうとしたら、朝日新聞を中心に絶対ダメだと言ってきたんですね。

竹中: 「解雇の自由化」なんて誰も言っていないですよ。さっきの新自由主義と同じですよ、誰も言っていないのに、さも言ったかのような幻想をでっち上げて、それでけしからんけしからんと言うんですよ。それでもう1つけしからんのは、それで政治がビビってしまったんですよ。

 私たちは「解雇のルールを法文で明確に定めよう」と言ったんです。いまは判例なんですよ。しかも古い判例で、たとえば大きな企業は、「もしもここでリストラをしたら訴えられるかもしれない」という訴訟リスクを感じるんですよ。

田原: それで、訴えられたら負けるんですよ、判例では。

竹中: 負けるかどうかはやってみなければわからないんですが、そもそも訴訟リスクを感じるから、そんなのはイヤだからできないわけですね。ところが一方ではこの判例は曖昧だから、「うちなんかは訴訟なんかされるわけがない」と思っている弱小の企業なんかは、平気でクビを切るわけですよ。訴訟リスクを感じない企業は、平気でクビを切っているんです。むしろそういう場合は、労働者の権利は守られていないんです。

 だからそれを明確にしようと言っただけなんです。それを「解雇の自由化をしようとしている」と言って、それでもう、会議全体でそういう議論をするのは避けようということになったんです。

田原: なんで明確化するというのは反対が強いんですか? 明確にするのはいいんじゃないの?

竹中: 全然わかりません。要するに、それは某新聞がおもしろがってやっているんですよ、「あいつは新自由主義者だ」みたいな感じで。本当にレベルが低くて志が低い。そういうのに対して、「いや、私たちはちゃんと議論するんです」というふうに、担当大臣に言ってほしかったと思うんですが、そういう場面はなかったですね。