[障害者スポーツ]
伊藤数子「新プロジェクト『スポーツ車椅子キャラバン隊』」

 NPO法人STANDでは、これまで障害者スポーツの拡大に向けて、さまざまな事業を行なってきました。大会の模様を伝えるインターネット生中継「モバチュウ」の配信や、障害者スポーツ体験イベントの開催などがそうです。また、スポーツウェブサイト「挑戦者たち」の配信、ロンドンパラリンピックの時期には、「Road to LONDON」をウェブ配信しました。しかし、それらはほとんどが私たちが用意した会場やサイトに来訪してもらうというものでした。最近、それだけでなく、私たちの方から訪れるとことも必要なのではないかという思いが湧いています。それは、ある出来事を耳にしたことがきっかけでした。

 ある知人の小学生の子どもは、幼少時代の事故がきっかけで車椅子を使用しています。人一倍好奇心旺盛でスポーツが大好きなその子は、とても活発でやんちゃそのもの。車椅子を器用に動かして、いつも元気いっぱいです。ところがある日、その子が両親の前で泣き始めました。学校でとてもショックなことがあったのです。

 その日、小学校に地域の福祉課の職員が来てある授業がありました。車椅子を見せて子どもたちにこう言ったそうです。
「これは車椅子と言って、足が不自由な人たちが乗るものです。車椅子の人たちは、少しの段差でも身動きがとれません。高い所にあるものも自分では取ることができません。かわいそうですね。だからみんなで助けてあげてね」

 この職員の言葉は、決して間違ってはいません。確かに、困っている人たちに対して手を差し伸べることは、とても大事ですし、子どもたちの教育にとっては不可欠なことです。事実、車椅子では不自由だったり不便なこともあります。しかし、できないことばかりをクローズアップされて話されたために、自身も車椅子に乗っている子どもにとっては、極めてショックの大きい言葉だったのです。

 自分自身でできるものは何でもやりたい、というのは障害の有無に関係なく、子どもなら自然な気持ちですし、それが成長へとつながっていきます。実際、その子は車椅子に乗っていても、少しの段差なら自分で乗り上げることもできるし、もちろん人から助けてもらうこともありますが、自分でできることもたくさんあるし、もっともっと増やそうと努力しているのです。ところが、「車椅子に乗っている人たちはかわいそうだから助けてあげてね」と言われ、自分自身がかわいそうと思われていると感じてしまったのです。

 一方、健常の子どもたちも「障害のある人ってかわいそう」「車椅子に乗っている人は、自分一人では何もできない」と思ってしまうかもしれません。それは一見、優しい心を育むことにもなりますが、その反面、健常者と障害者は違うんだ、という考えをも生み出しかねないのです。障害のある人たちとほとんど接することのない子どもたちにとっては、よりその傾向が強くなります。それでは本末転倒です。