佐藤優のインテリジェンス・レポート「外務省幹部の異動と北方領土交渉の展望」「スノーデン事件」

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【まえがき】

北方領土交渉は、このままだと失速します。至急、外務省の態勢を立て直す必要があります。安倍晋三首相-斎木昭隆外務事務次官-上月豊久欧州局長ラインを確立してクレムリン(露大統領府)とのチャネルを解説する必要があります。原田親仁駐露大使の交替も視野に入れた方がいいと思います。持ち時間は1年半くらいしかないと思います。  スノーデン事件は米国インテリジェンスの構造的問題に起因するものです。この点についてもかなり踏み込んで書きました。

【佐藤優直伝「インテリジェンスの教室」vol016 目次】
―第1部― インテリジェンスレポート
 ■分析メモ No.36 「外務省幹部の異動と北方領土交渉の展望」
 ■分析メモ No.37 「スノーデン事件」
―第2部― 読書ノート
 ■読書ノート No.44 『本は10冊同時に読め!』
 ■読書ノート No.45 『スパイのためのハンドブック』
 ■読書ノート No.46 『統合の終焉 EUの実像と論理』
―第3部― 質疑応答
―第4部― 文化放送「くにまるジャパン」発言録
―第5部― 佐藤さんの今後の予定(8月中旬まで)
現代ビジネスからのお知らせ

分析メモ No.36 「外務省幹部の異動と北方領土交渉の展望」

【事実関係】
安倍政権は、6月28日の閣議で外務省の河相周夫事務次官の辞任、斎木昭隆外務審議官(政務担当)の事務次官への就任を決定する。

【コメント】
2.―(1)
6月17日夜(日本時間18日朝)、英国北アイルランド・ロックアーンのホテルで日露首脳会談が行われた。朝日新聞の報道を引用しておく。

ロシア外相、今秋訪日 日ロ首脳会談、関係強化で一致

【ベルファスト〈英・北アイルランド〉】主要国首脳会議(G8サミット)に出席するため英国・北アイルランドを訪問中の安倍晋三首相は17日夜(日本時間18日午前)、サミット会場のロックアーンでロシアのプーチン大統領と会談した。両首脳は、両国関係強化のため、今秋にロシアのラブロフ外相が訪日することで一致した。

北方領土交渉については、今年4月の日ロ首脳会談で合意した外交当局の次官級協議を行うことを再確認した。具体的な日程は固まっていないが、日本側はラブロフ氏の訪日前に開催したい考えだ。>(6月18日『朝日新聞デジタル』)

2.―(2)
19日のロシアの通信社「インターファックス」によると、ウシャコフ露大統領補佐官が、「8月の終わりにモスクワで外務次官級協議が行われる。当然、平和条約の問題にも言及される」と述べた。

3.―(3)
河相氏は去年9月に次官に就任した。次官の任期は通常2年であるが、河相氏はわずか10ヵ月で更迭された。不祥事以外で次官がこれほど短期に更迭されたのは前代未聞のことであるが、河相氏のような無能な政治的日和見主義が外務省の事務方トップから排除されたことは、日本の国益に大きく貢献する。この人事は、安倍内閣が行った最大の成果と言ってもよい。

3.―(4)
しかし、これによって北方領土交渉が進む保障はない。なぜなら、北方領土交渉を含む日露平和条約交渉は、前述のように日本の外務審議官(政務担当)とロシアの外務次官(アジア担当)の間で行われるからだ。ロシアの外務次官は8人いるので、日本の局長に相当するにすぎない。

この交渉を担当するモルグロフ露外務次官は、中国専門家で、北方領土交渉に対しては、「平和条約交渉は行うが、領土交渉は行わない」というレトリックを展開する対日強硬論者だ。5月23日、ロシア外務省は、公式ウエブサイトに「第二次世界大戦時の韓国/朝鮮と中国における『慰安婦』問題をめぐる橋下大阪市長の発言に関する『リア・ノーボスチ』通信社の質問に対するルカシェビッチ露外務省報道官の回答」(以下、「外務省回答」と略する)と題する文書を掲載した。

「外務省回答」が、<このような発言は、日本社会に、戦後の現実の結果を完全に受け入れることを拒否することを含む、第二次世界大戦の結果について世界で受け入れられている価値からかけ離れた、偏向した評価を押しつけようとする一部の政治勢力による継続的画策を背景にしてなされたものである>という認識を示している。・・・・・・

分析メモ No.37 「スノーデン事件」

【事実関係】
1.
6月21日までに米検察当局は、スパイ行為などの容疑で元CIA(米中央情報局)職員のエドワード・スノーデン氏(30歳)を起訴した。

【コメント】
1.―(2)
6月5日、英国の『ガーディアン』紙が、NSA(米国家安全保障局)が米国の電話会社ベライゾンの通話記録を毎日数百万件収集していると報じた。一般の人々には、CIA(米中央情報局)、FBI(米連邦捜査局)と比較してNSAは馴染みが薄い。

3.―(2)
NSAとの契約職員であっても、ほぼ無制限に高度な秘密情報にアクセスできるという事実が明らかになった。『ガーディアン』『ワシントン・ポスト』の報道がなされた後、ワシントンで情報源は米国インテリジェンス機関のどれかの高官であると噂されていたが、<そうではなく、情報漏洩者は、政府と契約している巨大会社ブーズ・アレン・ハミルトン社の比較的下級の職員だった>(6月11日『インターナショナル・ヘラルド・トリビューン』紙)。

スノーデン氏が民間会社の下級職員であった理由は、能力が低いからでない。インテリジェンスに非合法活動は不可欠だ。それだから、万一、事故が生じたときに備えて外部の民間会社の下級職員のカバーで重要な任務に当たらせるのである。

同氏の<年収は約20万ドル(約1980万円)>(6月12日『朝日新聞デジタル』)。このような高級で処遇していることからも、CIAの中堅幹部相当(日本の外務省ならば課長もしくは局審議官級、一部上場企業なら部長級)の扱いをスノーデン氏は受けていると見た方がいい。

4.
さて、重要なのはインテリジェンス業界の掟を熟知しているスノーデン氏が、FBIに逮捕されれば、厳しい尋問を受け、終身刑(もしくは100年を超える長期禁錮刑)で、一生、刑務所から出ることができなくなるリスクを冒して、このような暴露を行った動機だ。

前述のようにスノーデン氏の年収は約20万ドルなので、高校中退者の中ではかなりの高給取りだ。中国やロシアのインテリジェンス機関とつながっているという情報も現時点ではない。そうなると、スノーデン氏自身が<「米政府が世界中の人々のプライバシーやインターネット上の自由、基本的な権利を極秘の調査で侵害することを良心が許さなかった」>(6月12日『朝日新聞デジタル』)と述べた内容が真実の動機である可能性が高い。・・・・・・

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