古賀茂明と日本再生を考えるメールマガジン動画版Vol.005 第4回 堀潤さんとの対談「メディアを変えることはできるのか」
【目次】

■古賀茂明と日本再生を考えるメールマガジン Vol.058(動画版第5回)
 テキスト書き起こし(2013年5月24日配信分)
 ●橋下市長の「慰安婦発言」どこがNGなのか
 ●合法か違法かというモノサシでいいのか
 ●成長戦略第2弾への失望
 ●メディアの「危機管理」とは何か
 ●先輩記者の職を賭した発言
 ●オープンジャーナリズムという挑戦
 ●進化し続けるメディア対策
 ●メディアを変えることはできるのか

メディアを変えることはできるのか

古賀: ところで、堀さんの活動に関してもお聞きしたいんですが、いまは、「8bit News」というのを始めているんですよね。

堀: これは去年の6月に、僕がまだNHKにいる間に、友人たちと一緒に立ち上げたインターネットサイトなんです。一般の人が自分で撮った映像で――スマートフォンでもいいし、ビデオカメラでもいい――、自分がニュースだと思ったものを「YouTube」にアップロードして、そのリンクをわれわれのサイトに張ってもらう。われわれはそれを、いわゆる市民のニュースが集約されたサイトですということで打ち出してます。

 これを立ち上げた最大の理由は、いままで古賀さんとお話ししていた内容に通じるんです。世の中にはさまざまな情報があふれていて、結局自分の力で分析しないと影響されるばかりですよね。原発の事故が起きたときも、やはりメディアが出す情報に翻弄されたわけです。

 けれども、一般の受け手の側がメディアのリテラシーみたいなのものを少し高めていって、自分で情報を収集し、分析し、世の中についての一定程度の視点を持ち、その上で自らのスタンスを決めて世の中とコミットするようになれば、つまり「当事者性」を持てば、いろんなことが変わるんじゃないかと思ったんです。当事者性を持った一般の人が、受信者であり、発信者になれば、メディアの問題を解決するための一つの要因になるんじゃないかな、と。

 一般の人でも、もし自分のスマートフォンで世の中に起きている事象を誰かに伝えられるということになったら、その瞬間から、何を撮ろうかなとか、どんなふうに撮ればいいかなとか、ちょっとずつ考えるようになるじゃないですか。そういうきっかけになるサイトがつくればいいかな、と思ったんです。

 日本では民主主義がなかなか育っていかないと言われたりしますが、それって政治が悪いとか、官僚が悪いとか、そういう話じゃないと思うんです。実はその社会を構成している一人一人、僕ら自身がもっと成長しなきゃいけないんじゃないかなと。

「なんで政治は何もやってくれないだ」とか、「どうして景気を回復させてくれないんだ」とか不平不満を募らせて、「もう信用ならない」とか批判しているんだけど、「じゃあ、あなたは何をするんですか」と突きつけたときに、「えっ、僕がですか」「私がですか」と、そのときに初めて考え始めるんですよね。そういう、僕だったら、私だったら、俺だったら、自分だったら、どうするかなあという、そういう場をつくりたいと考えたんです。

 このサイトをつくって、成功したこともいくつかあります。昨年の6月15日にサイトを立ち上げて、1年近くになるんですが、一次情報を持った一般の人たちの発信によって、制度が少し変わった例が二つあったんです。

 一つは、原発の作業員として現場に行くことを決めた長野県の自動車関係の会社の営業マンのケース。仕事を辞めて、原発作業員として現場に行って、自分で原発の中身を見て発信したい、と接触してきたんです。テレビや新聞を見ていても、本当の原発の状況がどうなっているのかわからない、堀さんたちは力を貸してくれるのかと。それに対して僕たちは、「力はもちろん貸します。取材の方法であったり、どんなふうに撮影すればいいのかなどのアドバイスもします。撮影したものは僕らのサイトにアップロードすれば、僕とか仲間とかが情報をみんなに伝える。情報拡散のハブになりましょう」と説明したんです。

 結局、彼はある小型のカメラを持って、東京電力福島第一原発の現場に入っていくんですね。すると、彼は下請の会社に雇われているので、いわゆる下請多重構造、東電から下に7社にもわたる会社があることがわかった。地場の産業は7層構造になっていることが見えてきたんです。

 その中で、嘘の履歴書を書かせて、素人の作業員にあたかも原発の作業員として実績があるかのように偽りを言わせて、元請け会社に送り込んでいく下請の構図も見えてきた。また、そういう過程の中で、東京電力は下請けの原発作業員に関して明確な危険手当の項目をつくっていないから、危険な作業に従事することを勘案して上乗せしている時給分が、どんどん中間搾取、ピンハネされている実態なんかも見えてきた。

古賀: ああ、そうか。その映像をもらって、アップロードしたんだ。