空回りする「クールジャパン」
その処方箋をニューヨークの折り紙教室に見る

Taro's Origami Studio」のホームページより

折り紙こそクールジャパン

 今年3月5日付けの読売新聞朝刊の第二面に、ニューヨークで折り紙教室を主宰する日本人男性の紹介記事が掲載されていた。アメリカ在住の弁理士・矢口太郎氏が約1年前に開設した「Taro's Origami Studio」には、5歳から72歳の現地生徒118人が通い、タブレット端末を駆使したオリジナルの教材を使って、日々折り紙に親しんでいるという。

 折り紙を片手に微笑む矢口氏の写真付きで400字程度にまとめられた短い記事は、全体的に、異国で文化活動に励む日本人を取材した、いわゆる「心温まる良い話」といった視点が前面に出ていた。

 だが私はこの記事を読んで、「折り紙こそクールジャパン」と短く引用された矢口氏の言葉が妙に気にかかった。

 政府が文化輸出を推進し、「クールジャパン」という言葉が国内で盛んに使われるようになって久しいが、一方で、一連の政策が肝心の海外においてどれだけの成果を上げたかは残念ながら不明確である。実際、私が過去五年間ほどヨーロッパとアジアで生活を送るなかで、こうした施策の果実を肌で感じることはほとんどなかった。

 しかし、長年に亘って国内外でビジネスを展開してきた弁理士が「折り紙こそクールジャパン」と意気込むのを読み、この折り紙教室は、じつは「心温まる良い話」というだけではなく、より壮大なプロジェクトなのではという気がしてならなかったのだ。

 私はさっそく、矢口氏に連絡を取ってみた。

 氏の東京出張中にお会いすべく、時間の調整をやり取りする課程で私が先ず知ったのは、矢口氏は日本に滞在する際、午前3時に起床し、午後6時には就寝するということだった。日米に事務所を構える特許法律事務所の代表として、アメリカ東海岸から月に一度は日本に出張するという生活を始めて14年。時差を克服するために氏が確立した、独自の生活リズムだった。

 こうした規律を自らに課して、国際的にビジネスを行う矢口氏が経営する折り紙教室は、やはり特別なのではないか。私は期待に胸を膨らませて、氏とのミーティングに臨んだ。

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