国際会計基準(IFRS)への「当面の方針」を強引にまとめた金融庁の「八方美人」

 金融庁の企業会計審議会は6月19日、「国際会計基準(IFRS)への対応の在り方に関する当面の方針」をまとめた。委員の一部からは異論が出たものの、字句修正も一切受け付けず、会長権限で一気に取りまとめた。人事異動の時期が迫り、とにかく一定の結論を出したい金融庁のシナリオ通りに落ち着いたということだろう。

 民主党政権下の「政治主導」で、それまでのIFRS導入論議がストップされ、反対派が大量に委員に任命された。その委員構成が続く現状では、到底、IFRS導入推進派と反対派が折り合うことは難しいとみられていた。それだけに、金融庁からすれば「知恵と腕力で何とかまとめた」と言いたいに違いない。

 だが、公表された「当面の方針」の中味をみると、余りにも八方美人。賛成・反対それぞれの主張を盛り込み、金融庁の事情までも織り込んだ「同床異夢」の産物になっている。

立場によって読み方が違う「当面の方針」

 「国際会計基準に『日本版』 金融庁、株式売却益など独自仕様」---日本経済新聞は審議会が開かれた19日の朝刊で、こう報じた。すでに議論がまとまり、形ばかりの会議が開かれるというのなら、それは見事な"スクープ"と言えただろう。

 だが、意図的に議論の方向性を示し、それを既定路線とするような報道には「裏がある」と見るのが普通だろう。日本版IFRSの導入をことさら強調したかった人たちがいる、ということだ。

 IFRSは国際的な会計基準の統一を掲げて、英ロンドンにある国際組織IASB(国際会計基準審議会)が基準を決定している。その純粋なIFRSの基準のうち、日本企業が反対する基準を除外した日本版を作ってしまおうというのである。これは経団連がここへきて急速に主張しているもので、経団連はこれを「J-IFRS」と呼んでいる。

 つまり、IFRSの導入に慎重な姿勢を示している企業が納得できる方向に議論が進んでいることを印象付けたかったに違いない。おそらく金融庁か経団連のリークだが、金融庁は躍起になってリーク疑惑を否定している。

 IFRS推進派が今回の「当面の方針」に異論を唱えなかったのは、純粋なIFRSを任意適用する範囲を大幅に拡大する方針が盛り込まれたからだ。これまでは上場企業で海外に一定規模の子会社を持つことがIFRS採用の条件だったが、これを撤廃し、上場を目指す非上場企業にも、海外事業を行っていない企業にもIFRS利用に道を開いた。しかも、IFRS利用を条件にした株価指数を作るよう取引所に働きかける、という一文まで盛り込んだ。

 つまり、日本企業のIFRS利用がデファクトとして広がっていく、と読んだのである。日本企業の横並び志向からすれば、あり得るストーリーだ。いくら日本版IFRSを作っても、現実には使われないのではないか、という判断だ。

 一方の反対派は、IFRSを全上場企業に義務付ける「強制適用」には絶対反対を貫くかたわら、日本の基準を部分的に残した"なんちゃってIFRS"の採用を求めてきた過去があった。それだけに、日本版IFRSの導入には正面から反対できない。任意適用を拡大しても、そうたやすく企業がIFRS採用に動くことはあり得ないと高をくくっている。

 つまり、同じ、「当面の方針」でも立場によって読み方が違うのだ。

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