「講座: ビジネスに役立つ世界経済」
【第9回】 ~「バブルリレー論」と中国~

〔PHOTO〕gettyimages

 先週のバーナンキFRB議長の出口政策を示唆する発言以降、主要国では長期金利の上昇と株価調整が顕著となっている。中国もその例外ではない。ただし、中国の金利上昇は、世界的な長期金利の連動性による上昇を大きく上回る上昇幅となっている。特に、銀行間の資金融通金利である翌日物金利の上昇は著しい。

 先週も指摘したが、2000年半ば以降、上海金融市場の市場金利であるShibor(シャイボー)翌日物金利と上海総合株価指数の動きは、きれいに逆相関関係を維持している。市場短期金利の高騰は、中国の株価暴落の直接的な原因となっている。

 ところで、短期金利、特に、翌日物の短期金利は、政策当局(特に、金融政策を司る中央銀行)の資金供給スタンスと直接的に結びついているため、Shibor翌日物金利の高騰が続いているということは、政策当局による何らかの意向が反映されている可能性が高い(中国の場合は、外貨準備に絡む対外資本取引との関連性もあるが)。

 インフレ懸念が台頭する局面では、中央銀行である中国人民銀行が、市場への資金供給を抑制するため、Shibor翌日物金利は上昇する。また、金融引き締め局面では、対外資本取引にも何らかの規制がかかっている可能性が高い(これは、外貨準備の伸び率から、輸出入金額、及び直接投資金額等の「実需」での資本取引額の伸び率を引いた、「実需以外の資本取引額」の伸び率が大きく低下してきたことから推測できる)。

 だが、今回は、この「実需以外の資本取引」の伸び率はそれほど顕著に低下している訳ではない(とはいえ、大きく伸びている訳ではなく、低位安定しているため、金融緩和からバブルが再燃している訳でもない)。つまり、最近のShibor翌日物金利の高騰は、通常の(マクロ金融政策という側面の、インフレ抑制からの)金融引き締めではなさそうだ。

 中国経済の現況は、必ずしも景気が顕著に減速している訳ではなく、「冴えない」状況が続いているという感じであろう(なにせ、中国の場合、経済統計の数字の信頼性が今一つという欠点があり、多くの経済指標をみることで総合判断することが難しい)。

不良債権の「炙り出し」としての金融引き締め実施

 中国当局も断続的に景気対策を実施しているとの話もあるが、景気対策にともなって政府から支給された資金は、実体経済部門の取引に回り、景気の回復、活性化につながるというよりは、不動産等の金融取引に向かい、不動産価格を押し上げている。現在の中国では、景気が顕著に回復する前に、主要都市の不動産価格が一斉に上昇に転じている。

 これは、先週も指摘した通り、中国経済の成長が、次のステージに移行しつつあるためであろう。すなわち、中国経済は、まさに「構造的」に、高成長局面から安定成長局面へ移行しつつあると考えられる。

 特に、従来、安価な労働力を提供することで、高成長のドライバーとなっていた農村部から都市部への人口移動が減速しつつあり、もはや、安価な労働力を背景に「薄利多売」的な輸出主導型の経済成長を実現する、という成長モデルは限界に達している。これは、現在の中国が、高度経済成長から安定成長に移行した1970年代半ばの日本と、ほぼ同じ成長ステージに位置していることを意味する。

 このように、「構造的」に、高成長が望めない経済状況下で、再び高成長を実現するために、金融緩和や公共事業拡大等の景気対策を実施したとしても、実質経済成長率は上昇せず、インフレ率が上昇するのみである(これは、1970年代半ばの田中角栄元首相の「日本列島改造論」の下での大規模金融緩和と大規模公共投資の組み合わせが、インフレをもたらした点からも明らかであろう)。

 筆者は、現在、中国政府が実施している金融引き締め(もしくは、短期金利の高騰の放置)は、今後の中国経済の「安定成長」の足枷となりかねない不良債権の「炙り出し」をしているのではないかと想像する。

 つまり、地方政府が主導する「融資プラットフォーム」など、中央政府がその実態を把握しにくい金融スキームを用いた投機的な取引の実態を把握しつつ、不良債権、及び不良債権予備軍を「バッドバンク」として切り離して、「塩漬け」できれば、中央政府がグリップを握る形で、「グッドバンク」による金融仲介、信用創造機能を維持し、長期的な安定成長(実質7%成長)が可能になると考えているのではないだろうか。

 そして、そのために、株価下落という多少の犠牲を払うことをいとわない、断固とした姿勢を示しているのはないかと考える。その意味では、将来の持続的な安定成長のために、中国の政策当局は正しい政策を選択しているとも言える。

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