野党の言い分を聞く度量のない与党と、国民の声を代弁できない野党第一党がねじれた参議院の混乱
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 6月26日で、この通常国会は閉幕する。しかし、国会、とくに参議院の状況は混乱の極みである。ねじれ国会とはいえ、重要法案の採決もままならず、国民生活に深く関わる問題へのルール作りが遅れている。そのような状況に立ち至ったのは、与野党の国会対策担当者の間で意思疎通が不十分で、信頼関係も築かれていないからである。

 そもそも、お互いに相手を非難するばかりで、妥協点を見出そうという努力が足りない。いわゆる「0増5減」法案にしても、参議院で採決しなくても、憲法59条の規定で、60日経てば否決されたとみなすことができる。したがって、与党は歩み寄りなどする必要はないと、強気に出てくる。

 21日で60日が経過したが、この日の参議院本会議は他の法案の採決を行ったのみで、第二ラウンドは開かれなかった。議長を出している民主党は、衆議院選挙制度改革は十分ではないとして、採決を回避したのである。一方、自公両党は、平田参議院議長の不信任決議案を提出して抵抗している。

 基本的なことを言えば、与党の側の国会対策とは、できるだけ野党の言い分を聞いて、法案の円滑な審議を行うことである。しかし、今の自民党には、その度量がない。参議院選挙でも勝つことは自明だと確信しているのか、重要法案も、選挙後の秋の臨時国会で容易に処理できる、わずか1~2ヵ月の辛抱だ、だから野党の言うことなど聴く必要はないとでも言わんばかりの態度である。これでは、野党が反発するのも無理はない。

多様な国民の声を代弁できる野党の形成を

 参議院自民党に傲慢さが目立ってきたのは、川口順子環境委員長の訪中滞在延期問題からである。自ら召集を決めた委員会を反故にしてまで中国に対して従属外交(「外交」などと呼ぶのさえ躊躇するが)を行った川口氏の問題点は、このコラムでも厳しく弾劾してきたが、その彼女を叱責するどころか、守ろうとした自民党執行部の姿勢は理解に苦しむ。

 そのツケが回り、まずは、予算案の参議院での大差否決となり、今回の会期末の混乱を生んでいるのである。自分の功名心のみでルール違反を犯した川口氏は、参議院議員として晩節を汚したし、重要法案不成立の責任を取らねばなるまい。そして、総選挙の大勝で自信過剰となった自民党執行部もまた、党内ガバナンスの欠如を反省すべきであろう。

 川口問題について、ある自民党幹部は、「あれは彼女の我が儘であり、困ったものだと思っていたが、党として彼女を支持することになったので、仕方なく従った」と述べた。また、別の幹部は、「どうして舛添さんは、川口氏の訪中延期に反対するのだろう」と疑問を呈したというが、これまで国会などでの私の発言をよく聴いていれば、私の川口批判の理由はよくわかるはずである。

 メディアもまた、すっかり川口氏に騙されていたことを、今は気づいているはずである。川口氏が正しいのなら、中国での「川口外交」を報じなかった自社の北京特派員を糾弾するのが先であろう。外務省は、最初から川口問題の本質をわかっており、呆れていたのが実情である。

 23日に投票が行われた東京都議会選挙は、自民党、公明党の圧勝で終わった。民主党は大惨敗を喫し、共産党にも及ばない第四党となった。参議院選挙後の政界地図がどうなっているかは分からないが、予想されているように参議院でも自民党が大勝するとなると、少数派の声も聞いて慎重な審議を行う国会は、あまり期待できない。

 ねじれ国会は悪いことではない。野党の言い分を聞かざるをえないので、与党の暴走を抑えることにもつながるからである。私が厚生労働大臣のときに、多くの法案を成立させ、懸案の様々な問題を解決できたのは、ねじれ国会のおかげだと言ってもよい。政官業が癒着し、自民党の族議員が改革に反対する中で、野党の建設的な批判は、守旧派の族議員と対決する武器として、大いに役立った。その武器を活用して、改革を進めることができたのである。

 メディアもまた、川口問題で自民党の機関紙に成り下がった今回とは違い、自民党政権や厚労省の問題点を厳しく指摘した。批判の矢面に立った私は、まさにサンドバッグ状態になったが、それでも、メディアからの問題提起を梃子にして、年金記録問題やC型肝炎問題などで一定の成果を上げることができたのである。

 参議院選挙後の最大の課題は、機能する、そして多様な国民の声を代弁できる野党をどのようして形成するかということである。その点では、野党第一党である民主党の責任は大きい。総選挙の敗北からまだ放心状態のままであるが、新たなる飛躍に向けて懸命の努力をすべきである。

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