【防衛 その3】
サイバー戦争、宇宙戦争への備えを!

Delta II GPS rocket 〔PHOTO〕gettyimages

 私たちがカーナビやスマホで使っているGPS。よく知られているように、この技術は、米国が宇宙空間に打ち上げた31基のGPS(Global positioning system)衛星を利用した技術である。米国は世界中にこの技術を無償で供与しており、民間利用だけでなく、自衛隊を含めた各国軍の戦闘機や巡行ミサイル等の軍事技術もGPSを利用しているのだ。

 一方で中国である。もう1つの大国である中国は、2007年1月、地上からミサイルを発射し、自国の気象衛星「風雲1号C」を破壊する実験を行い、衛星破壊能力を獲得した。明らかに米国の宇宙支配に対抗する意図である。米国に依存しない独自のGPSの開発も進めており、2012年12月には実際に中国版GPS「北斗衛星導航系統」のサービスが開始された。現時点では対象はアジア地域のみだが、2020年までに全世界をカバーする予定で、既に16基の測位衛星を軌道に乗せており、測位精度は誤差10メートル以内だという。

 安全保障の舞台は宇宙空間に移っていると言えよう。

 もう1つの舞台がある。サイバー空間だ。

 2001年の同時多発テロの後、米国は国土安全保障省を設立し、サイバー攻撃に備える大規模な演習「サイバーストーム」を行うなどしてサイバーテロに備えている。また、軍にもサイバー軍(USCYBERCOM)を設置して、サイバー攻撃専門の軍隊を運用している。同省によると、実際、米国の企業や政府機関は中国からサイバー攻撃を受けているという。また、2012年8月に世界最大の石油会社サウジアラコムで3万台のコンピューターがサイバー攻撃を受けたことは記憶に新しい。

 企業の知的財産などを盗む産業スパイだけでも被害は大きいが、現実の人的・物的被害を伴う大規模なサイバー攻撃になれば、より被害が深刻だ。攻撃対象が発電所の制御や電力網の管理、航空管制などに使われるコンピューターとなれば、まさにテロリストやテロ国家によるサイバー戦争と言えるだろう。

 私たちは、時代の変化に応じて的確にリスクに対処できなければ、自分たちを守ることはできないのだ。

1.「宇宙の平和利用」原則を、「非軍事」から「非戦略」へ緩和を!

「月その他の天体を含む宇宙空間の探査及び利用における国家活動を律する原則に関する条約」いわゆる「宇宙条約」により、宇宙の平和利用が定められている。この平和利用原則は、核兵器など大量破壊兵器を運ぶ物体を宇宙空間に配備しないこと、月その他の天体の軍事利用の禁止などが規定されている。日本を除く世界各国では、宇宙空間の軍事利用は、「非侵略」という目的であれば禁止されていないと解されている。

 しかしながら、日本では、「平和の目的に限り」という語の解釈に関する政府答弁において「非侵略」ではなく「非軍事」と解され、その後、1985年の政府統一見解で自衛隊が衛星などを利用する場合、民間で一般的に利用されている技術レベルに限定するという「一般化原則」が示された。このため、日本が現在運用している情報収集衛星もこの「一般化原則」により衛星の解析能力が民間並みに抑えられたのだ。

 安全保障の舞台が宇宙に移っている現在、日本固有の宇宙の平和利用原則の解釈を維持することは非合理的である。政府は一刻も早く宇宙の平和利用原則の解釈を国際スタンダードの解釈に変更し、自衛隊による防衛目的の衛星の運用を可能にすべきである。

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