ドイツ
トルコ反政府デモの標的にされるエルドアン首相とはどんな男なのか?
〔PHOTO〕gettyimages

 イスタンブールの真ん中、タクスィム広場で市民のデモ兼座り込みが始まったのは、5月28日のことだった。そもそものきっかけは、この広場に隣接する公園の古木を伐採し、ショッピングセンターを建設する計画。ショッピングセンターの外観は、この場所に1940年まであったオスマン帝国時代の兵営を彷彿とさせるデザインになるという。

 当時の兵営は、伝統的な玉ねぎ型の塔のある美しい建物であった。しかし、市民にしてみれば、木を切るのもけしからんし、そんな時代錯誤な物を建てるのもけしからん。そこで建設反対デモとなったのだが、それはあっという間に、エルドアン首相に抗議する政治デモにすり替わってしまった。

トルコはシリアのような独裁政権ではない

エルドアンとは何者か? 2001年に結成された保守政党AKP(公正発展党)の党首で、2003年3月よりトルコ共和国の首相だ。一言でいうなら、彼は、トルコをイスラムの伝統に則った近代国家にしようとしている。

 トルコの近代史を振り返ると、19世紀にオスマントルコが滅びたあと、麻のように乱れていたこの国を統一したのがムスタファ・ケマル・アタテュルク。そして、1923年にトルコ共和国が成立した。アタテュルクはひたすら西洋化に励み、トルコはイスラム世界初の世俗主義国家となる。

 第二次世界大戦後はNATOやOECDに加盟したが、実際の権力を掌握したのは軍であった。軍が政府を牛耳り、イスラム勢力を徹底的に排除した。だから、トルコでは、大学や公式行事の場では、女性の頭のスカーフは禁止されている。

 ところが、エルドアンが政権を握って以来、様子が少し変わってきた。たとえば、公立の食堂や大学構内でのアルコールの飲用禁止(民間のレストランでは許可されている)。また、法制化されてはいないが、少なくとも子供は3人産むべきだとか、妊娠中絶の規制をもっと厳しくするべきだ、というエルドアン首相の意思は明確だ。

 現在、トルコの人口ピラミッドは、ドイツや日本から見れば、うらやましい限りの健康的な分布となっているが、エルドアン首相は、おそらく、出生率というのはあっという間に変化してしまうことを知っているのだろう。ドイツも日本もそうだった。しかし、若い人たちにしてみれば、アルコールの禁止も、中絶の制限も、出産の奨励も受け入れられない。すべては民主主義に逆行するのだ。

 さらに、エルドアン首相が進めている橋や空港や大ショッピングモールの建設計画も、様々な癒着が囁かれ、非難の的となっている。そういう意味では、デモが起きる理由はたくさんあった。ただ、はっきり言っておかなければならないのは、トルコはシリアのような独裁政権ではないということ。エルドアン首相は、正規の投票で国民に選ばれた首相なのだ。

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