前代未聞の“失態”も「検察改革」の一環か---警視庁捜査2課の贈収賄事件が不起訴になったワケ
[Photo] Bloomberg via Getty Images

 旧厚生省事務次官事件、外務官僚機密費流用事件など、過去に輝かしい戦果を誇り、全国の捜査警察のなかで質量ともにトップに位置する警視庁捜査2課が、摘発した贈収賄事件を起訴できなかったという前代未聞の"失態"に衝撃を受けている。

 捜査2課は、東京都北区の中学校新築工事に絡み、便宜を図る見返りに現金500万円を受け取ったとして、4月9日、収賄容疑で同区営繕課主任主事の多田忠久容疑者、贈賄容疑で建設会社・新英興業専務の大畑勇夫容疑者を逮捕した。

 当然、マスコミはこれを報道、『朝日新聞』は「『カネ要求したら高額で驚いた』500万円収賄容疑、東京・北区の主事供述」と見出しに打ち、『産経新聞』は、「会社に箔つけたかった」という贈賄側の間接的な供述で記事を作成している。

有罪は"鉄板"のはずだった

 ここからうかがえるのは、「贈」と「収」の双方が罪を認めていることだ。
 贈収賄事件の立件で最も難しいのは自供させることだが、それができているのだから"鉄板"である。起訴して有罪判決の流れは、この時点で確定。だからマスコミも決め打ちした。

 ところが、検察は起訴しなかった。「処分保留」とはいえ不起訴である。

 こうした場合のマスコミの扱いは小さい。最も長い『朝日新聞』の記事で454文字。それだけでは、なぜ起訴しなかったのかはわかりにくい。東京地検は、4月30日、「現時点では起訴するに足りる証拠がない」と、理由を説明したのだという。

 考えられるのは、捜査段階で認めていた贈賄側と収賄側の2人の容疑者が、検察の段階で否認に転じたことである。

 では、なぜ否認に転じたか。

 事件構図はシンプルである。
 中学校新築工事の入札が行われた2011年5月の数カ月前、多田主事が大畑専務に入札予定価格を教え、新英興業を中心とするJVが約26億8,000万円と落札率98%で落札。その謝礼に、同年9月、新英興業の建築現場事務所で500万円が渡されたというもの。

 現金の手渡しなので、2人の供述が頼り。
 警察段階で認めたものを検察段階でひっくり返したのは、そもそも贈収賄という事実がなかったか、あったのだが警察官より検事のほうが対処しやすいと見たかのどちらかだ。

 ここで、贈収賄の有無を論ずることはできない。地検の「証拠がない」という言葉を信ずるしかない。

 ただ、かつての刑事事件の常識に照らせば、不起訴処分としたこと自体が"事件"である。

 "事件"はなぜ起きたのか。行き着くのは、2年前の検察改革=特捜改革である。

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