古賀茂明と日本再生を考えるメールマガジン動画版Vol.004 第2回---「不発だった成長戦略」ほか
【目次】

■古賀茂明と日本再生を考えるメールマガジン Vol.056(動画版第4回)
 テキスト書き起こし(2013年4月26日配信)
 ●TPPで日本は本当にアメリカの言いなりになるのか?
 ●ウルグアイラウンドの教訓
 ●TPPお化けの正体
 ●不発だった成長戦略
 ●闘わない「矢」では意味がない
 ●「0増5減」のまやかし

古賀茂明と日本再生を考えるメールマガジン動画版Vol.004 第1回はこちら

不発だった成長戦略

古賀: 次のテーマは、成長戦略。いろんなことを言い始めてますけど。

Gbiz: 安倍総理が「第三の矢」として打ち出しましたね。

古賀: はい。先週の金曜日(4月19日)、安倍さんが「子育て」成長戦略の柱として打ち出しましたね。「子育て」というより「女性の活用」という言い方をしていましたけれど、日本はこれから人口減少社会に入っていくなかで成長を高めていくためには、なるべくたくさんの人に働いてもらわなくてはいけない。ところが、日本はほかの先進国に比べて子育て時期の女性が少ない。子どもが産まれると会社を辞めちゃって、一回労働市場から出ちゃう。非常に多くの女性が戦力外になって、これが「成長」という意味で非常にマイナスになっていると。

Gbiz: しかも、再参入が非常にしにくい。

古賀: そうですね。そういう問題がある。それからもちろん、そういう状況だと逆に、「働きたい」と働くほうを選択した女性は子どもをつくらないということになって、少子化に拍車がかかる。ですから、いろいろな意味で女性が働きやすくすることが大事だと。これは、大きな方向はぜんぜん間違っていませんし、どの政権でも必ずそういうことを言ってきたんですね。ただ、成長のために女性を活用しなくてはいけないから、子育てしやすい社会にしましょうっていう、この動機づけっていうのは、そうとう嫌がられるだろうなと。

Gbiz: 「私は道具か!」と。

古賀: 昔、柳澤伯夫厚労相(当時)が、「女性は産む機械だ」という発言をして、とんでもないという反発を受けたことがありますけど、ちょっとその発想に近い、危ういところがあるなというふうに思いますね。

 根本の問題は、日本の場合、男が働き過ぎていることなんですよ。働き過ぎるというのは、昔の言葉で言えば「滅私奉公」、企業に100%、自分のエネルギーを費やさなくてはいけない、忠誠を誓わなくてはいけない、そういう社会になっていることです。最近若い人たちは昔の人とは違うと言われるんですけれど、でもやっぱり実際には20代後半から30代、40代といういわゆる働き盛りの人たちの労働時間が非常に長い。

 統計に表れる労働時間だけではなくて、いわゆるサービス残業っていうのが未だに日本ではある。「サービス残業」なんて言葉は、先進国にはないんですよ。働いた分の対価を得るというのは当たり前ですから。それから、残業っていうのは割増率25%というのが普通で、休日は50%ですけど、これは先進国では低いほうです。これをもっと上げてもいいんですけど、上げるには非常に反対が多い。それ以外にサービス残業がある。

 男性が働き過ぎだと、家事とか子育てなどに費やす時間がないから、どうしても女性に負担がかかる。昔は男が大黒柱で、その給料で家計の7割~8割稼いで、奥さんがパートのようなあまり責任の大きくない仕事でいいんだという時代がかなり続いていた。でも、今の社会では女性の進学率も非常に上がりましたし、高校とか大学を出て働く女性は、同じように育ってきた男の人と同じように仕事したいという人が増えているわけですね。

Gbiz: はっきり言って、女性は非常に優秀ですしね。

古賀: ですから、逆に言うと、男と同じように働かなくてはいけないということになっちゃったんですよ。そうすると、男がやっている滅私奉公的なベタッと会社にしがみつく働き方を女性もしないといけなくなってしまった。そうしないと、女性はやっぱり腰かけ的だねとか、やっぱり本腰入れてないね、みたいなことになって競争上非常に不利になる。まあ、「女性のオヤジ化」とかよく言われるんだけど、結局男と同じように働かなくてはいけないということになると、やっぱり子育てというのは難しくなる。

 というか、子どもを産むことは男にはできませんから、どうしても女性はその部分はしなくてはいけない。「しなくてはいけない」って、べつに悪いことではないんですけど。喜んで子どもを産む方も多いと思いますが。

 でもやっぱり、仕事との両立という面では、非常に負担が大きくなる。ですから、男の働き方が仕事だけじゃなくて、ほかの活動にも時間とエネルギーを割けますよというバランスのとれた働き方になれば、その仕事以外の部分をある時期、子育てに使えばいい。女性も同様に働けるということになれば、仕事以外の時間が長くなるわけですから、子育てにも使いやすくなるわけですね。

 そういう意味で、男の働き方を変えないと、なかなか本当の意味での「女性が社会に参画し、かつ子育てもやりやすいという社会」にならないんじゃないかなと思います。

 育児休業制度というのは政府がやっていて、原則1年――例外的に1年半まで延ばせるんですけど――はだいたい半額ぐらい給料がもらえるわけですね。これは政府がおカネを出しているわけですが、それプラス企業は企業でいろいろな育児制度をつくっているので、1年~1年半の育児休業を取った後、さらに企業の制度を使って全体で3年ぐらい安心して休めるような制度にしてくださいと企業に要請しているわけです。

 でも、企業がやる部分というのは企業の負担ですから、中小企業ではそもそもできませんよという会社が多いし、やっている企業でも非常に負担が大きいために、活用する側も――女性だけでなく、最近はイクメンという男性も増えていますけど――企業に負担をかけているという後ろめたさを感じている。ここをやっぱり変えていく必要があるだろうなと。