2013.06.20(Thu)

企業は、成功体験で傾く。危機感は、どれだけ持っても「持ちすぎ」にはならないと思います。

イトーキ 松井 正

週刊現代
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「お客様に未来のオフィスをご提供したい」と語るのは、イトーキの松井正社長(67歳)だ。デスクやロッカーなどのオフィス家具を長く提供してきた同社だが、現在は「知的創造性を引き出す質の高いオフィス環境づくり」を提案。さらには「オフィスのIT化」を進めるなどし、業績を上げているという。


企業は、成功体験で傾く。危機感は、どれだけ持っても「持ちすぎ」にはならないと思います。まつい・ただし/'46年、大阪府生まれ。'69年に関西大学経済学部を卒業し、イトーキへ入社。当時は販売と製造が別会社で、松井氏は販売会社に所属。その後、東京法人販売部長、西日本支社長などを経て、'08年には常務執行役員マーケティング本部長、'09年には専務執行役員へ就任。'09年より現職

女性に人気

 商品は時代に合わせて、めまぐるしく変化していきます。いま弊社の商品で売れているのは「LANシート」。パソコンをシートの上に置くとネットワークに接続されるシステムです。パソコンをコードにつなぐ必要がないから便利で、パソコンを部屋の外へ持ち出すときは必ずオフラインになるからセキュリティも万全です。

 ほかには女性専用の椅子「カシコ」。女性は筋力が弱いため、足におりた血液を心臓に戻す力が弱く、むくみや冷え性に悩まされます。しかし「カシコ」は椅子の座面が太ももを圧迫しないので足の血液が上昇しやすい。弊社の女性社員にも大変、喜ばれています。

伊藤喜

 弊社は明治時代に伊藤喜十郎の手により創業され、当時は金庫や謄写版(紙をロウでコーティングし、鉄筆で文字を書き、印刷する道具)などを販売していました。資料を見ると、様々な企業と競合していましたが、いまも経営を続けているのは弊社だけのようです。以前はよく「企業30年説」がとなえられました。

 たとえば謄写版が印刷機に、さらにはコンピュータを利用したプリンターに替わるなどするうち、ほとんどの企業が30年ほどで役割を終えてしまうというのです。これはある面で正しい。変化に対応できなかった企業は、数十年でその役目を終えます。弊社が明治から現在まで社業を続けてこれたのは、ひとえに「企業を継続させるのは『進化』である」という考えを実践してきたからだと思っています。

松井投手 少年時代に草野球を始め、40歳頃までプレーしていた。ポジションは投手。マサカリ投法(元ロッテの村田兆治氏の投法)に近かった

戦である

 危機感は、どれだけ持っても「持ちすぎ」にはならないと思います。様々な企業の歴史をひもとけば、ある商品で大成功し、その後、売り上げが落ちてきても「この事業、もう少しはいけるんじゃないか?」と思っているうちに市場からの退場を余儀なくされているからです。企業は、成功体験によって傾く、と言ってもいいでしょう。

 そこで弊社は「テーマ企画委員会」という組織を設け、先にお伝えした椅子「カシコ」のように「女性の力を必要とする企業が増えているからこそ、女性向けの椅子は作れないか」など、常にトレンドを読んでいます。事業「戦」略、企業「戦」士などと言うように、企業経営は戦です。私は常に、ひとつ失敗をすれば命がないと思って仕事をしています。

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