NHKはどこへ向かっているのか? 視聴者不在で進められる経営改革はいったい誰の声を聞くためのものなのか

 NHKが従来の年功序列型の賃金制度をあらため、能力重視型にするという。さらに賃金を5年間で10%カットするそうだ。職員を管理職に登用する際には新たに試験も導入される。すっかり普通の会社だ。おそらく財界出身のトップ(松本正之会長=元JR東海副会長)の手腕なのだろう。

 報道番組が視聴率にこだわり始めたのも民放並みだ。いや、それ以上かも知れない。『クローズアップ現代』のHPには、それぞれの放送日の視聴率が掲載されているが、こんな報道番組は民放でも見当たらない。

 一体、NHKはどこへ向かっているのか? もしも視聴率にこだわる方針を決めたのなら、プライムタイムに視聴率一桁台の番組がいくつもある現状と矛盾する。低視聴率番組を視聴者が甘受してきたのは「公共放送であるNHKの番組は意義深い」と考えられてきたためにほかならない。さて、当のNHKは視聴率を優先するのか、それとも番組の質や意義を重んじるのか、どちらなのか・・・。

普通の会社になればNHKの存在意義は希薄化する

 4月15日放送の『ニュースウォッチ9』は俳優・三國連太郎さんの死去を番組冒頭で報じた。新聞の紙面にたとえると、一面トップの扱い。なるほど、三國さんは日本を代表する名優の一人だったし、視聴者の関心は高い。

 けれど、海外でも名高い日本を代表する報道機関であり、公共放送であるNHKのニュースが、ワイドショー化してしまっていいのだろうか。芸能人の訃報の優先も視聴率にこだわり始めたことの表れのように見える。三國さんは文化勲章や国民栄誉賞の受賞者でもないし、死去は4月15日の正午には伝わっていて、速報でもなかった。

 ワイドショーそのものや視聴率にこだわること自体が悪いと言いたいわけではない。けれど、メディアにはそれぞれの役割がある。公共放送のNHKと民放とでは、見る側の意識も法律的扱いも違う。三國さんの死を報じた当日は北朝鮮情勢が緊迫していた。ほかにも政治・経済のニュースはあった。はたして、NHKの看板ニュースが芸能人の訃報を真っ先に伝えるべきなのか。

 三國さんの件だけではない。2011年4月25日の『ニュース7』は、スーちゃんこと田中好子さんの葬儀を二番手で報じた。田中さんの葬儀は本人の肉声テープが流され、やはり話題になったが、この破格の報道には局内ですら疑問の声があった。

 NHKが普通の会社になり、民放と同じことをやろうとしているのであれば、存在意義が希薄化する。それなら、いっそ民放になれば良いとまで思ってしまう。NHKも受信料の民事督促手続きや未契約者訴訟の手間が省けるだろう。

 人事制度改革や賃金カットも視聴者が望んだ改革なのだろうか。いや、違う。発端は2007年。当時の自公政権の菅義偉総務相がNHKに受信料の引き下げを求めたため、局内で経営効率化の検討が始められた。そこに視聴者の姿はなかった。

 そんなNHK改革の牽引車は、もちろん会長であり、その会長はNHK経営委員会によって任命される。経営委員会は一般企業の株主代表会のようなもので、委員は首相が国会の同意を得て任命する。視聴者は受信料を支払っていながら、会長や経営委員選びでは蚊帳の外なのだ。

この続きは、プレミアム会員になるとご覧いただけます。
現代ビジネスプレミアム会員になれば、
過去の記事がすべて読み放題!
無料1ヶ月お試しキャンペーン実施中
すでに会員の方はこちら