アベノミクスの成長戦略は、「ブラック企業」を流行らす結果となるのか?---日本企業の雇用変化が「ブラック企業」を生み出していることを実証的に明らかにした本

佐藤優直伝「インテリジェンスの教室」vol015 読書ノートより
【佐藤優直伝「インテリジェンスの教室」Vol.015 目次】

―第1部― インテリジェンスレポート
 ■分析メモ No.34「プーチン露大統領の離婚」
 ■分析メモ No.35「プリホチコ露官房長官の就任」
―第2部― 読書ノート
 ■読書ノート No.41『ブラック企業 日本を食いつぶす妖怪』
 ■読書ノート No.42『脳力のレッスン 特別篇 アベノミクスの本質と日本のイスラエル化』
 ■読書ノート No.43『オリバーストーンが語るもう一つのアメリカ史3 帝国の緩やかな黄昏』
―第3部― 質疑応答
―第4部― 文化放送「くにまるジャパン」発言録
―第5部― 佐藤さんの今後の予定(7月下旬まで)

読書ノート No.41

今野晴貴『ブラック企業 日本を食いつぶす妖怪』文春新書 2012年11月

 資本主義を放置しておくと、徹底的に労働者を搾取することになる。これは資本家(経営者)の倫理の問題ではなく、資本の内在的論理である。もっともどの資本主義も時代の文化的制約を受けるので、資本の論理を純粋に推進することはできない。労働者(特に若年労働者)を徹底的に搾取する「ブラック企業」の実態を本書は実証的に明らかにしている。

日本の雇用契約の場合には、長期雇用と引き換えに仕事の内容や命令のあり方にほとんど制約がかけられず、たいていのことが「人事権」として認められているところに特徴がある。契約内容をあいまいにすればするほど業務命令の内容は柔軟に、雇用の継続は確実にされていく関係にあるとされる。

だから、日本企業では2000年代に入って法律で義務付けられるまで、「契約書」を取り交わすことさえしなかった。長期雇用を前提とする以上、当面の「仕事の内容」を紙に記すことすら無意味だと考えられたのだろう。・・・・・・

このテーマについて深く知るための「連読」3冊
・今野晴貴「ユニクロ柳井社長の『黒い論理』」 『文藝春秋』 2013年7月号
・「ユニクロ 疲弊する職場」 週刊東洋経済 eビジネス新書 No.1 2013年5月3日
・フリードリヒ・エンゲルス(武田隆夫訳)「イギリスにおける労働階級の状態」『マルクス・エンゲルス選集2』 新潮社 1960年 (2013年6月9日記)

■読書ノート No.43

オリバー・ストーン/ピーター・カズニック(金子浩他訳) 早川書房 2013年6月
 『
オリバー・ストーンが語るもうひとつのアメリカ史3 帝国の緩やかな黄昏

オリバー・ストーンの米国現代史(米国は世界に影響を与える超大国であるので、同時に世界現代史にもなる)の最終巻。米中関係の今後の展望に関する記述が興味深い。

「エア・シー・バトル構想」――中国との対立姿勢明確に

中国の指導部は、中国の囲い込みを図っているとしてアメリカを非難し、この地域で戦力投射を行っているのは、自分たちではなくアメリカのほうだと主張した。中国は近隣諸国との領有権問題を平和的に解決する努力をしてきたというのだ。オバマ政権が前年の六四億ドルに続き、五八億ドル相当の台湾への武器売却を承認したことに憤りを示した。共和党の議員からの要求はさらに多額だったが、ある政府高官はこれに対し、ブッシュ政権に比べてオバマ政権はすでに「半分の機関に二倍の額を認めている」と応じた。中国共産党機関紙《人民日報》は、ほかの国際問題で、今後中国の協力を期待しないようにアメリカに告げた。「アメリカの政治家たちが、一方では中国に、責任ある大国として振る舞い、さまざまな問題に関してアメリカと協力するように求めながら、他方では無責任かつ徒に中国の核心的利益を損なうことができると考えているならば、それは完全な誤りだ」。中国軽視の実例と見なして中国が不満を唱える事柄はほかにもあり、オバマが中国との関係改善を図るために以前に一度見送ったダライ・ラマとの会談を決めたことも、その一つだった。

さらに、「エア・シー・バトル(統合空海戦闘)構想」と呼ばれるアジアを想定した新たな戦争戦略をアメリカが構築中であることも漏れ伝わっていた。・・・・・・

このテーマについて深く知るための「連読」3冊
・エリック・ホブズボーム(河合秀和訳)三省堂 1996年
 『20世紀の歴史――極端な時代
 『20世紀の歴史――極端な時代
・コスモピア編集部編『オバマ大統領再選勝利演説』 コスモピア 2012年
・ミハイル・ゴルバチョフ(工藤精一郎/鈴木康雄訳)新潮社 1996年
 『ゴルバチョフ回想録 上
 『ゴルバチョフ回想録 下