プーチン、リュドミラの離婚とプリホチコ露官房長官の就任の報道はプーチンの政治闘争へのシグナルなのか

佐藤優直伝「インテリジェンスの教室」vol015 インテリジェンス・レポートより
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【まえがき】
ロシアに関する踏み込んだ分析メモを2通書きました。特にプリホチコがロシア政府官房長になって、ロシア外務省は北方領土交渉をサボタージュするようになります。日本側からプーチンに直結する人脈を構築することが急務です。

【佐藤優直伝「インテリジェンスの教室」Vol.015 目次】
―第1部― インテリジェンスレポート
 ■分析メモ No.34「プーチン露大統領の離婚」
 ■分析メモ No.35「プリホチコ露官房長官の就任」
―第2部― 読書ノート
 ■読書ノート No.41
 ■読書ノート No.42
 ■読書ノート No.43
―第3部― 質疑応答
―第4部― 文化放送「くにまるジャパン」発言録
―第5部― 佐藤さんの今後の予定(7月下旬まで)

分析メモ No.34 「プーチン露大統領の離婚」

【事実関係】
6月6日、ロシアのプーチン大統領(60歳)はリュドミラ夫人(55歳)と離婚手続きに入る意向を表明した。

【コメント】
1.―(2)
夫婦で一緒にテレビインタビューに出演し、離婚発表をするとは誰も予想していなかった。<「2人は一緒に暮らしていないのではといううわさもある」と問われたプーチン氏は夫人と目を合わせ、「その通り。私は公人で、それを好きになれず折り合いをつけられない人もいる。リュドミラはもう9年もそれに付き合った。(離婚は)2人で話し合って決めた」と語った。>(6月7日『朝日新聞デジタル』)。離婚が合意の上であるとのプーチンの発言は、額面通りに受け止めてよい。

2.
プーチンは、私生活に触れられることを嫌う。2008年4月12日の『モスコーフスキー・コレスポンデント』紙にプーチンが近く新体操選手のカバエバ(2008年12月より国家院[下院]議員。現在、30歳)と結婚するとの報道がなされた。同年4月18日、イタリア外遊中、ベルルスコーニ首相(当時)との共同記者会見の席上、この報道に対する質問にプーチンが激昂し、「この記事には一言の事実もない」と断言した。プーチンの剣幕に恐れをなした新聞のオーナーは、誤報を認め、同紙を1週間休刊にし、編集長を更迭した。

それ以後、ロシアのマスメディアは、プーチンの私生活について触れることに極度に慎重になっている。そのような状況で、国営テレビの記者が「2人は一緒に暮らしていないのではといううわさもある」という質問を、自発的に行うことは想定できない。円満な離婚を演出するための働きかけがプーチン側からなされたと見るのが妥当である

4.
このタイミングで離婚を発表したプーチンに2つの思惑があると見られる。・・・・・・

分析メモ No.35 「プリホチコ露官房長官の就任」

【重要ポイント】
対日強硬論者のプリホチコが政府官房長官に就任したことにより、今後の北方領土交渉に悪影響が及ぶことが懸念される。

【コメント】
1.―(1)
5月に今後の北方領土交渉に影響を与えるロシア政府の人事異動が2件行われた。まず、5月8日、プーチン大統領は、ウラジスラフ・スルコフ副首相兼政府官房長官(48歳)を解任した。スルコフ自身が願い出て、解任が認められたので、純然たる更迭ではない。

1.―(3)
スルコフは、プーチン政権の「灰色の枢機卿」、すなわち、表に出てこないで、裏で種々の画策をする黒幕と見られている。もっともチェチェン系のスルコフが国民的な支持を得ることはできない。そこでスルコフは、表で活躍する政治エリートになれないと冷徹に認識し、裏に回ったというのが実態である。

1.―(6)
スルコフの解任については、プーチンがスルコフをメドベージェフ首相(前大統領)から遠ざけ、結果として大統領府の影響力が政府(首相府)よりも一層強くなるようにするためとの見方もモスクワの政治エリートの間では強い。いずれにせよ、対日関係改善派のスルコフが公職から外れたことは日本にとって好ましくない。

2.―(5)
プリホチコは情報操作のプロである。オフレコで、記者に日露間の不信を煽る情報を流すのが得意技だ。さらにプリホチコは、日本よりも中国との戦略的提携を強化することがロシアの国益に適うと考えている。・・・・・・