カイジ「命より重い!」お金の話
【第10回】 夏休みの旅行は、カイジの「1日外出券」と同じ


漫画『賭博黙示録 カイジ』とは?

自堕落な日々を過ごす主人公、伊藤開司(いとう・かいじ)。そのカイジが多額の借金を抱えたことをきっかけに「帝愛グループ」をはじめとする黒幕との戦いに挑んでいく大人気漫画。命がけのギャンブルを通じて、勝負師としての才能を発揮するカイジだが、その運命は果たして・・・。

(作者:福本伸行 講談社『週刊ヤングマガジン』で1996年11月号~1999年36号まで連載された作品)


【第9回】はこちらをご覧ください。

 地下の強制労働施設に送られたカイジは、毎月の給料を貯めようとがんばります。でもご存じの通り、誘惑に負けて毎日ビールや焼き鳥、ポテチなどを買って「豪遊」してしまいます。貯蓄には失敗するのです。

 この話は、人間の弱さとそこにつけ込む"搾取者"のあくどい戦略を表しています。このストーリーを一読しただけでは、「あぁ、やっぱりカイジは誘惑に負けてしまった。ここでも帝愛グループの"仕組み"が勝っていた」と感じて終わってしまいます。

 ですが、ここにひとつ違和感を覚えませんか? カイジが目指しているものは、じつは方向性が「おかしい」のです。

 カイジが貯蓄して目指していたのは、「1日外出券」です。地下の強制労働施設で必死に働き、6ヵ月間禁欲することで勝ち取ろうとしていたのは、50万ペリカもする「1日外出券」です。「1日」だけです。つまり「釈放」ではないんです。

 仮に、カイジが自分の欲求を押さえて貯蓄し、50万ペリカを貯め込んだとします。そして念願の「1日外出券」を購入しました。・・・で?

 カイジは、1日だけ地上に出て、"自由な生活"を送ります。ただし、お金がありません。

●カイジの月収は約9万ペリカ
●6ヵ月で貯められる最大金額は54万ペリカ
●1日外出券は50万ペリカ
●1万ペリカは日本円換算で、たったの1千円

 だとすると、仮にカイジが地下でまったく浪費せず6ヶ月間耐えたとしても、地上に持っていかれるお金は4万ペリカ。つまり4,000円なんです。

 たった4,000円では、地上に出てもいい生活はできません。まず、野宿はほぼ確定ですね。食事も大したものは食べられないでしょう。

 そして何よりも、1日経ったら、また地下帝国に戻るのです。これでは何も変わりません。また「ふりだし」に戻るだけです。1日すぎてしまえば、またゼロからのスタートです。これでカイジの生活は変わるのでしょうか?

サラリーマンにとっての、年に一度の外出券

 「年に一度くらいはパーっと贅沢に旅行をしたい」

 そろそろ夏休みの計画を立て始める人も多いのではないでしょうか? 1年間がんばってきた。夏休みくらいは、贅沢に海外旅行に行きたい。きっとそう考えている人もいるでしょう。

 その気持ちはわかります。ですが、それはカイジの「外出券」とまったく同じではないでしょうか?

 1年間がんばって働き、貯蓄する。そして年に一度の夏休みでパーっと使ってしまい、帰ってきたらまた同じ職場に戻る。まさにカイジと同じです。

 同じ職場に戻るのが悪いのではありません。その仕事が好きなのであれば、何も問題ありません。また、海外旅行に行くことがいけないのではありません。ただ、海外旅行を唯一の楽しみとして、1年間働いたご褒美と捉えるのがいけないのです。

 年に一度の「外出券」を気持ちの支えに、気が向かない仕事を続ける。「外出時」には、ここぞとばかりに散財する。そして1週間後に戻ってきて、また去年と同じ1年間を繰り返す。それでは状況はまったく変わりません。

 ではどうすればいいのか?

 外出券を求めて働くのではなく、そもそも外出券の必要性も感じないような働き方に変えることが、唯一の解だとぼくは考えています。

この続きは、プレミアム会員になるとご覧いただけます。
現代ビジネスプレミアム会員になれば、
過去の記事がすべて読み放題!
無料1ヶ月お試しキャンペーン実施中
すでに会員の方はこちら