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アップルとグーグル、最近の明暗を分けたものは何か?

〔PHOTO〕gettyimages

 先日、何気なくアイフォーンからグーグルの音声検索を使ってみて、以前よりも大分進化しているので、ちょっと驚いた。

 たとえば世界各国の首都や首相、あるいは著名な山の標高や観光スポットの場所などを片っ端から質問したところ、人工合成された女性の声でちゃんと答えを返してくる。これに加えて今後、グーグル・カレンダーやGメールなども音声操作できるようになれば、アップルの音声アシスタント「Siri」と大差がなくなる。いや音声検索がカバーできる範囲では、恐らくグーグルの方がアップルよりも遥かに上だろう。

 こうしたグーグルの攻勢に対してはアップルも相当危機感を募らせているのか、今週米国で開催された同社の開発者向けイベント「World Wide Developers Conference(WWDC)」ではSiriのテコ入れが発表された。

 次のバージョンからは、ユーザーが音声でスクリーンの明るさを操作したり、メールの読み上げを指示できるなど、よりきめ細かな操作ができるようになる。また、これに応えるSiriの声も、お馴染みの女性の声に加え、男性の声が追加されるという。

ビッグデータをグーグルに取られたくないアップル

 が、いずれもマイナー・チェンジの感は否めず、ここからも現在のアップルがグーグルの勢いに押されていることが伝わってくる。しかし、もっと気になるのは、アップルがSiriの検索機能を従来のグーグル検索からマイクロソフトの「Bing」へと切り替えたことだ(今週のWWDCでは、その旨が発表されたが、実際に切り替わるのは今年秋の予定という)。

 念のため断わっておくと、SiriはAI(人工知能)関係者の間では「ウエブ・エージェント」と呼ばれるものの一種だ。エージェント、つまり「代理」という言葉からも分かるように、一種の代理業者としてユーザーから色々な仕事を請け負い、それを適切なウエブ・サービスに割り振るのが仕事である。これらのうち、ユーザーからの検索リクエストについては、これまでのSiriはグーグル検索に仕事を任せるケースが多かった。

 アップルは今後、これをBingに切り替えるというのだが、これは明らかにユーザーよりも自社のビジネスを優先した決断である。どんな分野でも一社独占はユーザーに害を及ぼすので、マイクロソフトには今後ともBingを継続して欲しいのは勿論だが、現時点の実力を客観的に評価すれば、グーグル検索の方がBingよりは上だろう。それでも敢えてアップルがBingを採用することにしたのは、要するに最大のライバルであるグーグルにビッグデータを取られたくないからだ。

 繰り返すが、アップルはユーザーがアイフォーン(Siri)に向かって投げかける多数の質問やリクエスト、つまりビッグデータをグーグル検索に奪われたくなかった。だからユーザーの利便性を犠牲にしてまで、あえて劣勢にある検索エンジンのBingに切り替えることにしたのだ。

 (非常に高いレベルの話ではあるが)これはアップルとマイクロソフトによる弱者連合であり、別の見方をすれば、アップルはグーグルの攻勢に対して、それほどまでに追いつめられている。

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