[レスリング]
近藤隆夫「五輪競技であることが、そんなに大切か?」

スポーツコミュニケーションズ

「そんな五輪なら、必要ありません」

 でも、それらは実はたいしたことではないのではないか。

 人気が低下し、競技人口も減るだろうが、レスリングができなくなるわけではない。レスリングという競技に魅力を感じたなら、その人は始めるし、取り組み続けるのである。単にメジャーでなくなるに過ぎない。

 いや、世界的に見れば、レスリングほどの認知度なら五輪競技でなくなってもメジャー感を失わずにすむかもしれない。もし仮に、マイナー化しても、それの一体、何がいけないのか? 本質を見誤るよりも、はるかにマシなように思う。

 それでも、「メジャーであり続けたい」と関係者は願う。もちろん気持ちはよくわかる。でも、だからといって、「IOCの言うことは何でも聞きます。何でも聞きますから五輪から追い出さないでください」とひれ伏すような態度を、あっさりと見せてしまってよいものだろうか。

 レスリングは高貴な格闘技である。私は今回のレスリング界の動きを見ていて、違和感を覚え、寂しい気持ちになった。レスリング界が損得勘定抜きに、プライドを持って毅然としたメッセージを発することはできなかったのだろうか。

「そんな五輪なら、私たちには必要ありません」と。

近藤隆夫(こんどう・たかお)プロフィール>
1967年1月26日、三重県松阪市出身。上智大学文学部在学中から専門誌の記者となる。タイ・インド他アジア諸国を1年余り放浪した後に格闘技専門誌を はじめスポーツ誌の編集長を歴任。91年から2年間、米国で生活。帰国後にスポーツジャーナリストとして独立。格闘技をはじめ野球、バスケットボール、自 転車競技等々、幅広いフィールドで精力的に取材・執筆活動を展開する。テレビ、ラジオ等のスポーツ番組でもコメンテーターとして活躍中。著書には『グレイ シー一族の真実~すべては敬愛するエリオのために~』(文春文庫PLUS)『情熱のサイドスロー~小林繁物語~』(竹書房)『キミはもっと速く走れる!』 (汐文社)ほか。
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