「橋下大阪市長の慰安婦問題発言は、北方領土交渉にも悪影響をもたらす。日本に対して攻勢を強めるロシアの見方」ほか

佐藤優直伝「インテリジェンスの教室」号外より(2013年6月5日配信)
【目次】
―第1部― インテリジェンスレポート
 分析メモ No.33「慰安婦問題をめぐる橋下徹大阪市長の発言が北方領土交渉に与える影響」
―第2部― 読書ノート
 読書ノート No.40 佐高信『友好の井戸を掘った人たち』
―第3部― 文化放送「くにまるジャパン」発言録

分析メモ No.33「慰安婦問題をめぐる橋下徹大阪市長の発言が北方領土交渉に与える影響」

【重要ポイント】
ロシア外務省が、日本政府による北方領土返還要求を橋下徹大阪市長の慰安婦問題に関する主張と同根の「第二次世界大戦をめぐる歴史の見直し」と見なして、北方領土交渉における対日攻勢を強めている。

【事実関係】
5月23日、ロシア外務省は、公式ウエブサイトに「第二次世界大戦時の韓国/朝鮮と中国における『慰安婦』問題をめぐる橋下大阪市長の発言に関する『リア・ノーボスチ』通信社の質問に対するルカシェビッチ露外務省報道官の回答」(以下、「外務省回答」と略する)と題する文書を掲載した。

【コメント】
1.
橋下徹大阪市長が記者会見で慰安婦問題について言及したのは5月13日のことである。その後、橋下発言に関する照会にロシア政府はコメントしていなかった。「外務省回答」がロシア政府による初めての公式の反応である。

2.
「外務省回答」でルカシェビッチ報道官は、橋下氏のレトリックがとりわけ「冷笑的性格」(ツィニーチュヌィー・ハラクチェル)を帯びていると評価しているが、ロシア語で「ツィニチュニー」という形容詞は、事実に関心が無く、価値観をもたない信頼できない人という強い否定的意味を持つ。外務省の公式声明で日本人の政治家に対してこのような形容詞が使われることは稀である。ロシアが橋下発言に対して強い忌避反応を示していることがうかがわれる。

3.―(1)
さらに重要なのは、・・・・・・

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読書ノート No.40

佐高信『友好の井戸を掘った人たち』岩波書店 2013年3月

 佐高信氏は、政治的のみならず、テキストの読み方もリベラルである。ここで言うリベラルな読み方とは、政治的立場からではなく、テキストの内在的論理に即して読み、矛盾点を指摘するというアプローチだ。

佐高氏は、リベラル派、市民派で好意的に受け止められている孫崎享氏の『戦後史の正体』(創元社、2012年)を手厳しく批判する。

ベストセラーになった孫崎享の『戦後史の正体』(創元社)では、特に岸信介が不当に高く評価され、三木武夫が不当に低く位置づけられている。しかし、護憲か改憲か、日中友好促進か「待った」かという視点から見ると、岸と三木の評価は逆転する。岸は「日中友好の井戸を掘った」政治家ではなく、むしろ、その井戸を埋めた人であり、改憲派である。一方、三木は「井戸を掘った」一人であり、徹底した護憲派だった。

 つまり、外務省の国際情報局長をやり、防衛大学校教授だった孫崎には、憲法感覚と日中友好という視点が欠けているのである。ために、アメリカから“希望の星”と目された岸をアメリカからの自立派と持ち上げる過ちをおかしてしまった。

 『戦後史の正体』では、やはり自立派に入れた石橋湛山が、「在日米軍問題」と「中国問題」という日本にとって踏んではいけないアメリカの「虎の尾」について堂々と発言したと指摘していながら、岸をも自立派としたために、石橋が岸と鋭く対立したという矛盾を説明できなくなってしまった。>(181頁)

 孫崎史観の特徴は、恣意的な二分法にある。あらかじめ「善い人のボックス」と「悪い人のボックス」に登場人物を入れておく。そして、それに適合する情報をパッチワークのようにつなぎ合わせていく。佐高氏は、孫崎氏の思想的アクロバットを的確に批判している。・・・・・・