特集 地域おこし協力隊
田舎に移住・定着目指す都会の人材を地方で活用 207自治体で617人が活動中

自治体のブースが並ぶ地域おこし協力隊の全国合同説明会=東京都千代田区で1月27日

 自治体が地域の活性化や農林水産業、住民生活の支援などで外部から人材を募り、国が一定の財政支援をする「地域おこし協力隊」事業が今年度で5年目を迎えた。現在3府県、204市町村の計207自治体で617人が活動している。過疎化や高齢化に悩む地域への都市住民の移住・定着を促し、移住者には田舎での生活や起業などの機会を提供するのが狙いだ。しかし1人年間200万円の報償費と最長3年の期間が不十分との声があり、受け入れ側の自治体との不協和音も聞こえるなど、これからの課題が浮き彫りになりつつある。

 協力隊事業の特徴は、原則として首都圏、中京圏、近畿圏の3大都市圏と政令指定都市に住む人がそれ以外の市町村に住民票を移して「住民」になることを条件にしていることだ。自治体が人材を募集し、説明会や現地での生活体験、試験的な私見的な短期間の活動などを通して隊員を委嘱する。

 今年1月27日には初めて全国合同説明会が東京都内で開かれた。46市町村が参加し各ブースではのぼりを立てて、担当職員が訪れた募集希望者に自治体の魅力や期待する活動などを直接説明していた。

 協力隊の財源は国の特別交付税で賄われる。任期は概ね1年以上で最長3年。1人当たり報償費としての200万円のほかに活動経費として200万円の計400万円が支給される。活動経費は、住居や車の借り上げ費、作業道具の購入費、定住に向けた資格取得費、空き家や空き店舗の改修費などが認められる。田舎暮らしとはいえ「生活が苦しい」との不満が聞かれ、特に家族で移住した場合はその悩みが大きいという。

 また、自治体に対しても隊員の募集などに関する経費として200万円を上限に国から交付される。

 総務省によると、隊員の63・1%が男性。年齢構成は20歳代が43・7%で最も多く、30歳代が36・4%で20~30歳代で8割を占めている。そのほか40歳代12・7%、50歳代4・8%、60歳代も2・5%いる。

 同省が11年度で任期を終了した100人を対象にアンケートしたところ、67人が定住した。その進路は就農30人、就業28人、起業5人、未定その他が4人だった。

茨城県常陸太田市 長島由佳さん(27)
女子大と地域の縁で5人が活動

常陸太田市で活動するルリエ。中央が長島由佳さん

 11年4月に協力隊員として委嘱され、活動3年目に入りました。同時期に配属された他の2人の隊員と、里美地区(旧里美村)を中心に活動しています。

 私たち3人の最大の共通点は、皆、清泉女子大学文学部地球市民学科(東京都・品川区)の卒業生であるという点です。同学科と常陸太田市は大学の授業を通じて10年来の交流があり、これまでに100人以上の学生が里美地区を訪れています。

 この間に築かれた関係を土台にして授業以外でも継続して地域に関わり貢献できるようにと、同学科の教員と元教員、卒業生が任意団体「つなぐ会」を作りました。この団体が常陸太田市と提携し、協力隊制度を活用して卒業生を送り込んでいるのです。12年度からは同市金砂郷地区(旧金砂郷町)に2人の卒業生が加わり、計5人でチーム名「Relier(ルリエ、フランス語で『つなぐ・むすぶ』の意味)」として活動しています。

 私は大学卒業後、都内の一般企業に勤務していましたが、将来的には国際的に平和構築の分野に携わりたいと考えていました。就職して3年が経ち、次のステップを模索していた時期に、大学の卒業生のネットワークで協力隊募集を知り、説明会をきっかけに応募しました。地域活性化活動に携わって丸2年がたち、今ではすっかり地域の魅力に取りつかれ、将来の仕事の希望も海外から国内にシフトしました。

 常陸太田市では、「地域資源の発掘」「情報発信」「交流人口の拡大」の3本柱を軸に活動しています。市と連携したエコミュージアム活動、ブログやSNSを活用した情報発信、外部イベントでの市特産品販売、「域学連携事業」のコーディネーター役、ツアー企画・受け入れ、など業務は多岐にわたります。

 この他に、協力隊は地域に溶け込む活動も欠かせません。このような業務を、主担当を決めて年間を通して進め、基本的には地区ごとの他の隊員がサポートするというチーム体制を取っています。

 私が主に取り組んでいるのは「食の掘り起し」「地域内ネットワーク作り」「地域特産品開発」などの分野です。地域の文化や歴史、人々の季節に合わせたライフスタイルに裏打ちされた地域女性の作る家庭料理に着目し、それらを調査しレシピ集を発行したり、定期的に料理教室ツアーを行ったりしています。

 最初は消極的だった地域の女性たちも、段々と地域食材や料理の価値に気づき始めており、今後の展開が楽しみになっています。また、地域内の若者を中心とした「里美の夢を語ろう会」を立ち上げ、これまであまり交流のなかった地域内の若者同士がゆるやかにつながる場を定期的に開催しています。今ではその中から地域住民主体のプロジェクトが生まれ、特産品を生み出すなど活発に活動しており、協力隊としては事務局的な役割を担うなどして、地域住民と足並みをそろえて活動しています。

 東日本大震災の影響もあり、住民の間には活性化への諦めムードも漂う中、私たち協力隊という「人的資源」が投入されました。あくまでも主役は地域住民であり、地域に元々ある資源に付加価値を付け、対外的にPRする具体的な方法を取り、実際に行動に移すことで協力隊としての役割を担っています。

 地域の魅力を最大限に引き出し、住民と共に切磋琢磨し合いながら同じ方向に向かって具体的な取り組みを行う、「企画者」ではなく、どんな些細なプランも実際に実現に移せる「行動者」「地域活性化事業を仕事として行う人材」を目指しています。今後5~10年で急速に高齢化や空き家の諸問題が進行する日本の中山間地域には今、このタイミングでそのような人材が必要だと痛感します。そして地域や自身の働き方への関心が高まっている今、若者が積極的に地域へ入っていくことへの一つの手段として、地域おこし協力隊の制度は大変有効だと思います。

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