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ITトレンド・セレクト
2013年06月06日(木) 小林 雅一

D-Waveの量子コンピュータは本物か? ---その基礎理論を考案した日本人科学者に聞く

 量子コンピュータの活躍が期待される分野は、「NP完全」あるいは「NP困難」などと呼ばれる特殊な問題だ。これらは計算方法は分かっても、それに従って実際に計算しようとすると現在最速のスパコンを使っても数年~数十年、甚だしい場合には数千年~数万年もかかるような問題だ。

 このような難問は、IT、金融、医薬品、航空、軍事など様々な産業領域に存在し、それらを解くために異次元のスピードで動作する量子コンピュータの出現が待たれているのだ。

日本でも研究開発は始まっている

 こうした言わば「夢の次世代コンピュータ」を実現するため、米国をはじめ先進諸国では巨額の資金を投入して量子コンピュータの開発を進めている。一般には、あまり知られていないが、日本でも同様のプロジェクトが既に開始されており、これまでに約30億円の国費が注ぎ込まれたと見られる。

 これも予め断っておくが、筆者は何もこうしたプロジェクトに反対しているわけではない。量子コンピューティング、あるいは量子情報処理と呼ばれるような研究は、単にコンピュータを桁違いに速くするといったことにとどまらず、突き詰めると「マルチ・ユニバース(多宇宙解釈)」、つまり「我々のいる宇宙とは別の宇宙が幾つも存在する」といった、とんでもない世界観の変革を迫る可能性すらある。それほど深い意味を持つ研究なのだ。

 これまで政治家や官僚が、日本の成長を阻害する恣意的規制など構造的問題を棚上げにして、所詮は対症療法に過ぎない景気刺激策を繰り返し、何百兆円もの累積債務を作ってしまった愚行に比べれば、量子情報処理のような、言わば「宇宙の真理」を探究するために何十億円使ったって、そう悪いことではなかろう。

一般には、まだ基礎研究の段階

 が、やはり問題はある。それは、この種の遠大な研究プロジェクトは歩みが遅いということだ。つまり最終的な目標が遥か彼方にあるだけに、その研究には切迫感が欠け、しかもそれを容認する傾向が生まれてしまう。これまでのところ、米国や日本をはじめ世界各国の量子コンピュータ・プロジェクトは実に基礎的な研究レベルにとどまっている。

 たとえば「量子コンピュータ用のビット(正確には「qubit」と呼ばれる)を3個つないで実験しました」とか「量子コンピューティングによって、15を5と3に素因数分解できました」とか、そういうレベルなのである。

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