堀賢一 第1回 「立木さん、じつはシマジさんのおかげでわたしは東京に家を建てられたんです」

撮影:立木義浩

<店主前曰>

 はじめて堀賢一に会ったのは、いまから28年前のことである。彼がまだニッカウヰスキーの広報部にいたときのことだ。男と女がそうであるように、相性が合う者同士なら、男と男も会った瞬間から意気投合して親しくなるものである。

 たとえ相手がわたしより若くても、わたしはいつも優れた男を師匠として仰ぐことにしている。堀賢一のワインに対する造詣の深さには舌を巻いた。フランスに留学してフランス語も自家薬籠中の物とした人だった。おまけにいい舌を持っていて、美味いものが大好きな男であった。

 わたしたちはよく2人で宴を持った。そんなとき堀は惜しみなくグランヴァンを持参してきた。そうこうするうちに、彼はアメリカ・カリフォルニア州ワイン協会の日本代表になった。久しぶりの対面だったが、堀は相変わらずふくよかな体を優雅に揺り動かしながら、よく笑った。

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シマジ 堀ちゃん、久しぶりだね。

 シマジさんはいま作家とバーマンの二足のワラジを履いて忙しそうなので、連絡するのを遠慮していたんです。でもこうして会うと、昨日別れたばかりのような感覚が蘇ってきますね。

シマジ そこが男と女との違いだね。女は2,3年も会わないとまったくアカの他人になってしまうけど、男と男は5年ぶりに会ったとしても昨日別れたように会えるんだよね。

 そうかもしれません。同棲した男女の仲でもそんな感じですもんね。シマジさん、最近、女のほうはどうなんですか?

シマジ 相変わらずだね。いまもって女の正体はわからないんだ。だから現代人にとって、男が冒険すべきフィールドは女しか残されていないんだろう。自然界を冒険する時代は、もう終わった気がする。南極で荘厳に死んだスコット大佐の時代までは別だけれどもね。女は男とは別の生き物だからこそ、獲物として面白いんじゃないのかな。

セオ シマジさん、今日はまたのっけから飛ばしますね。

シマジ 久しぶりに掘ちゃんと会ったから、興奮してるのかな。