廃炉費用は誰が負担すべきなのか!? この本質的な議論を避け、将来の電気料金にツケを回そうとする経産省の腹積もり

 原子力発電所を廃炉にする際の費用は誰が負担すべきなのか。経済産業省はこのほど、電力会社が廃炉にした場合の会計処理方法を見直す方針を固め、有識者会議を発足させると発表した。

 電力会社は40年の稼働を前提に毎期の決算で廃炉費用を積み立てたり、減価償却しているが、40年未満で廃炉にした場合など、積立金などで賄えない不足分が生じる。本来これは特別損失として一括計上する必要が出て来るのだが、この一括償却を止め、10年程度に分割して計上できるようにルールを変えようというのが、経産省の腹積もりのようだ。

 しかも、その分を毎年の電気料金に上乗せして吸収しようという考えらしい。年内をメドに制度の見直し案を決めるという。

過去のコストを将来の料金で回収していいのか

 難問が生じた時に会計ルールを変えてしまおうというのは、経産省の得意技だが、本当にそれが正しい方法なのだろうか。

 まず第1に、本来ならば一括で処理しなければならないものを10年間で分割処理しようというのは、「将来へのツケ回し」に他ならない。確かに一括で処理すれば、電力会社の業績は悪化する。電力会社はリストラを迫られ、あるいは資本増強が不可欠になるかもしれない。だからと言って、問題を先送りすれば、電力会社の隠れた負債として重くのしかかる。

 しかも、それを電力料金に上乗せするとなると、過去のコストを将来の料金で回収するということになる。電力料金は総括原価方式といって、かかったコストに"適正利潤"を上乗せして決めている。そこに電気の製造には使っていない「過去のコスト」を上乗せすることが、理論的に通るのかどうかも怪しい。廃炉を決める今の世代が負担するのではなく、将来にわたってそのコストを背負わせることが正しいのかどうか、である。

 新聞報道によると、「廃炉後も償却を続けられるようにすることも検討する」ようだ。減価償却は言うまでもなく使っている設備の減価部分を費用として認識する会計ルール。使えなくなった設備を償却するというのはどう考えても無理がある。

 脱原発を決めたドイツでは、政府が方針を決めた瞬間に大手電力会社が軒並み廃炉費用などを特別損失として計上、赤字決算に転落した。これに伴い、電力会社が大規模なリストラを迫られ、事業や資産の売却なども行った。一方で電力会社はこの費用が国の政策転換によるものだとして、国に対して損害賠償を求めている。

 ドイツの場合、あくまで原発を運営する電力会社が一義的な責任を負い、早期に費用処理を行ったということだ。もちろん上場企業として守らなければならない会計ルールを日本のようにそう簡単には変えられないという事情もある。

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