脱グローバル論 日本の未来のつくりかた
第1回 グローバル社会VS. 国民国家のゆくえ その1

内田樹 中島岳志 平松邦夫 イケダハヤト 小田嶋隆 高木新平 平川克美

お金の話ばっかりするのは、もうやめよう

平川 ええと、しょっぱななんで、ちょっと話しにくいんですけれども、問題提起のような形でお話をさせていただきます。  今日も暑いですが、昨日もまあものすごく暑くて、どうもこれだけ暑いと、日本は亜熱帯に入ったなという感じがしてまして。日本人というのはそもそも、東アジアの亜熱帯の小さな島国の住人なんだということを僕は実感しているんですけど、どうも多くの日本人はそれを忘れていてですね、夜郎自大になっているように感じます。「経済大国・日本」なんてところに自分たちを位置づけて、オレたちは世界と競争してるんだぞ、と。ここ30年ぐらいですかね、急激に日本人がそういう意識になり、なんとなく世界をキョロキョロ見回して、「とにかく乗り遅れてはいけない」という強迫観念に囚われている。僕は、もうちょっといい加減に、ダラダラしていていいんじゃないか、亜熱帯の国の住人としては、もうちょっとゆったりやりたいよね、というのがまず基本にあります。

『脱グローバル論』
著者=内田樹 中島岳志 平松邦夫 ほか
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 その考えに至った理由の1つは、どうも最近、マスコミやなんかで日本の現状や課題について、いろんな方がお話しされるのを聞いてると、お金の話しかしてないなと感じるんですね。政治家もそう。昨日の国会討論を見てましたけど、これも金の話ばっかりなんですよ、頭から終わりまで。財政がどうなるとか、増税の話だとかね。でも、政治にしても経済にしても、もうちょっと別な視点で見るべきではないかと思うんですよ。

 僕が着目したのはデモグラフィーという人口の統計学なんですが、それで見ていくと、みなさんご存知でしょうけど、2006年を境に日本の総人口が急激に減少し始めていて、向こう50年ぐらいの間に日本の人口は30パーセント減ると言われてるんです。さらに詳しく見ていきますと、日本の人口は鎌倉時代あたりから、ずっと一貫して増え続けていた。鎌倉時代には700万〜800万人しかいなかったんですが、江戸時代に3000万人になり、ピークの2006年で1億3000万人。で、そこから急に下がり始めるんですよ。歴史が始まって以来初めてと言っていい人口減少が急激なスピードで起こっている。このことに、なんでみなさんが着目しないのか、とっても不思議だったわけです。

 人口減少の原因は何かということについて、たとえば少子化という問題が語られます。将来への不安があるから子供を産まなくなって人口が減るんだと、右の方も左の方も異口同音におっしゃる。だから将来の不安をなくして子供が産めるようにしろ、という話をテレビなんかでもよく聞くんですけれども、そんな単純な理由で人口が減っているわけじゃない。なぜなら、歴史の中では、将来に対する不安が今よりもっと大きい時代はいくらでもあった。だいたい戦時中にも人口は増えてるわけです。僕はベビーブーマーですが、その当時といえば戦後のどさくさで、いちばん食うに困っていた時代ですよね。ですから、人口動態と、将来に対する不安とか経済的な理由とかは、全く関係がないんです。そうじゃなくて、別の理由で人口が減っている。そこを考えていかないと、今後の方針をすべて間違うというのが僕の考えです。