脱グローバル論 日本の未来のつくりかた はじめに
脱グローバリズム宣言 内田樹より

内田樹 中島岳志 平松邦夫 イケダハヤト 小田嶋隆 高木新平 平川克美

 脱グローバリズム宣言

 みなさん、こんにちは。内田樹です。  

これはシンポジウムの記録ですから、たくさんの方たちの発言が収録されています。全発言者を代表して「はじめに」を書くというのは、ちょっと私には荷が重いのですが、全セッションに参加したのが私と進行役の平松邦夫さんと2人だけでしたので、立場上、ひとことご挨拶を申し上げます。

 このチームができた最初のご縁は、平松さんが現役の大阪市長だったとき中之島で開かれた教育関係のシンポジウムでした。平松市長が司会を務めてくださり、鷲田清一大阪大学総長(当時)、釈徹宗相愛大学教授、そして私の4人で「大阪の教育」についておしゃべりをしました。それが平松さんとお会いした最初です。そのときのシンポジウムでのみなさんの発言は『おせっかい教育論』(140B刊、2010年)に収録されております。

 平松市長については、実はそのときまでどんな人だかよく知りませんでした。お会いしたときの印象は「ジェントルマンだな」というものでした。穏やかで静かな声で話される。教育についてはこのときはじめて意見を交わしたのですが、私の「学校教育に市場原理を導入すべきではない」という論の理路を市長はすぐに理解して、受け入れてくれました。

 それがご縁となって平松さんの市長在任中に「教育問題についての特別顧問」というものを委嘱され、ときどき市長のパーソナルな諮問にお答えしたり、公開の対談をしたりということをしておりました。

 そのあと2011年の大阪市長選がありました。現職の平松さんと維新の会の橋下徹前大阪府知事が激突して、大阪都構想や「グレートリセット」を掲げた橋下候補が圧勝した経緯はご案内の通りです。

 この選挙はある意味で日本政治の重大な転換点だったと思います。その本質的な争点はいったい何だっただろうかということを選挙後もずっと考えてきました。そして、「維新の会」が主導する新自由主義的・グローバリスト的な諸政策や、中国・韓国に対するナショナリスティックな姿勢に対して強い不安と懸念を抱く人たちが、下野した平松さんの呼びかけに応じて集まり、公共政策ラボという政策研究のための組織が作られました。

『脱グローバル論』
著者=内田樹 中島岳志 平松邦夫 ほか
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 日本のこれからの社会のありかたを、できるだけ広い射程で、中長期的なところまで見通して自由に議論する、そういう場を作ろうという趣旨のものでした。

 その後、2012年末の総選挙で安倍自民党が圧勝し、「維新の会」が54人の衆院議員を送り出し、グローバリズムとナショナリズムの混淆態が現代日本における「支配的なイデオロギー」になりつつあるという趨向がはっきりしてきました。ですから、公共政策ラボがこの時期に展開した連続シンポジウムは、この大きな流れに逆らって、反グローバリズムの理論的基礎を形成しようとした企てだったと言うことができると思います。

 平松さんと斎藤努公共政策ラボ所長の呼びかけに応じて参加してくださったのは、平川克美、小田嶋隆、中島岳志、イケダハヤト、高木新平という論客の皆さんでした。会社経営者、コラムニスト、研究者というわりと古典的な「肩書」を持つ3人と、いったいどういう肩書で紹介してよいのかわからない20代の若者2人という組み合わせです。