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「1ドル=50円代」の準備をしなさい
天外伺朗が提言

ドバイ・ショックによる円高で、輸出産業は一挙に利益が数百億も吹き飛ぶ恐怖を味わった。しかし、日本企業を待ち受ける苦境はそれどころではない。元ソニー常務の天才エンジニアが提言する。

ドルが大暴落する
ソニーの栄光の時代を知る天外氏

 アメリカでも日本でも、かつて製造業が隆盛をほしいままにしました。私は、それを身をもって体験してきた世代です。

 テープレコーダー、トランジスタラジオ、テレビ、そしてレーザー技術も、すべてアメリカの発明品です。

 そのアメリカで、いまやGDP(国内総生産)に占める製造業の割合が'70年代の半分にまで落ち込み、12%を切っています。GMの車は品質でも価格でも国際競争力を失い、政府の巨額の支援のもとに再生を図っています。製造業全体の凋落のなかで、自動車産業だけが救われるのは難しい。

 アメリカの自動車産業は、非常に裾野が広く、根が深い産業ですから、アメリカ経済全体に致命的な打撃を与えるのは必至だと見ています。そうなると、自動車産業の破綻をきっかけにして、'12年ごろにはドルの信用失墜と大暴落がありうる、と考えていました。ドルの大暴落とは、具体的に言うと「1ドル=50円の超円高ドル安時代」です。ドルは緩やかに下がりつづけ、どこかの時点で急激に下落して50円を切る、と予想していました。

 しかし今回のドバイ・ショックによって、その時期は大幅に早まるかもしれません。いつ1ドル=50円時代が来てもおかしくない。現在の株式市場、為替市場は、極端にギャンブル化が進み、ちょっとした徴候に過剰に反応して、未来を先取りして多くの投資家が雪崩をうって一方向に進むという傾向があります。誰かが「ドル売り」に向かって動き出せば、みんながいっせいに売り、暴落が始まる。ケインズは「一国の資本の発展がカジノでの賭け事の副産物になったら、なにもかも始末に負えなくなる」と警告していますが、そのとおりのことがいま起きているのです。

 「1ドル=50円時代」になると、資本主義社会そのものが大きく変わるパラダイム・シフトが起こると私は思います。