橋下発言で広がる歴史認識と憲法改正問題の波紋

2013年05月28日(火) 舛添 要一

舛添 要一舛添レポート

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 ただ、今の自民党は、憲法改正問題を国民に提示する手法について、少し稚拙なような気がする。背景には、自民党憲法改正案の第一次草案(2005年)と第二次草案(2012年)の違いがある。

 前者は、私も事務局次長として起草作業に当たったが、当時は政権党であり、いかにして三分の二の多数を獲得するかに腐心した。与党のみならず、野党を巻き込まないと駄目なので、例えば、9条の改正については、「国防軍」ではなく、「自衛軍」としたのである。ところが、第二次草案起草時は、自民党は野党であり、民主党政権を激しく攻撃する立場にあった。そこで、右寄りのスタンスからナショナリズム色を強めた改正案をまとめあげたのである。

 しかし、昨年末の政権交代で自民党が政権に復帰して以降、野党時代に起草した右寄りの憲法草案が、必ずしも政権運営にプラスにはならないことが明らかになってきている。第一次草案でも、96条の改正条件緩和、第三章(国民の権利及び義務)で「公共の福祉」を「公益及び公の秩序」に代えることは盛り込まれているが、それらが、今回のように問題視されることはなかった。政権党は、政策提示の手法について、慎重でなければならないのである。

現代史教育の必要性

 歴史認識については、歴史研究者としての経験から言うと、まず資料の制約があるし、次に歴史解釈も歴史家によってそれぞれ異なる。私は、生まれ故郷である福岡の筑豊炭鉱や八幡製鉄所の歴史を調べていく過程で、戦前の在日朝鮮人には選挙権も被選挙権もあり、なかには国会議員や市町村会議員になった人までいる、という事実を知った。

 しかも、八幡製鉄所などで働くために、自らの意志で労働移民してきた朝鮮人が多数いることもまた、事実なのである。朝鮮人労働者が強制連行されたという事実のみではない、まったく別の事実もあるのである。このことは、在東京韓国大使を務めた友人の韓国人学者ですら知らなかった。

 日本人があまりにも現代史についての知識がないこともまた、困ったことである。韓国、中国、台湾などの大学で講義すると、彼我の学生の歴史知識のギャップに愕然としてしまう。

 これには、大学入試の時期も関連がある。高校の歴史授業は、古代から始まって明治維新に至る頃には、もうすぐに入試である。現代史まで教わらないうちに入試対策に追われるようでは、まともな知識が身につくはずもない。大学入試のあり方、歴史教育の方法、歴史書を読ませる工夫、大河ドラマなどの映像利用などについて、いま一度きちんと議論したほうがよいのではないか。それを怠っていては、今後、第二第三の橋下問題が起こるであろう。

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