「徹底討論TPP~日本の農業は壊滅するのか、生まれ変わるのか」
2013年4月25日19時30~放送分 【第3回】

[左から] 鈴木宣弘さん(東京大学大学院農学生命科学科教授)、篠原孝さん(民主党衆議院議員)、石川和男さん(政策家/社会保障経済研究所代表)
※この原稿は、4月25日19時30~行われた「政策講談」第3回を書き起こしたものです。書き起こしにあたっては、読みやすくするために必要最低限の編集を行っています。

【第1回】はこちらをご覧ください。

後継者問題に解決の道はあるか

石川: 後継者問題についても触れておきたいんですが、この問題は深刻です。ポイントはやっぱり充足感ですよね。自分のメンツも立つしプライドも満たされるというのは、自分の作ったものがちゃんとした値段で売れるということだから。

鈴木: そのことは、農家のみなさんが強くおっしゃいますよね。安く売って、あとで掴み金をもらっても嬉しくなんかない、って。

石川: それは良くないですよね。ニーズってあるじゃないですか。生活保護をある程度カットするのは財源の問題もあってしょうがないかもしれないけど、生活保護を切るなら、その分のおカネでちゃんとした日本のコメを、生活保護を必要としている人たちに配るとかすればいい。農水省がそういう予算をちゃんとつければ、農家も困っている人たちも、みんなハッピーだと前から思ってるんですけど、誰も言わないよね。

篠原: 戦前の長野などでは「次男三男並木の肥やし」と言われていたんです。次男や三男はいてもいなくても良くて、その代わり長男は跡取りとして家を継ぐ存在だから羨ましがられた。それだけ農業がちゃんとしていたし、大事にされていたということです。その後は、「家付き、カー付き、ババァ抜き」で、長男が嫌われ出したし、まして農家の長男など避けられて嫁不足となり、それが今の農業後継者不足につながっている。

 その結果、家のため、村のために残った長男が独身のままでいるケースが多くなり、私は胸が痛くなります。世の中が変わればまた農家の長男が羨ましがられる状況になるかもしれないけど、なかなか日本は変わらない。そういう状況がわかっていながら、そして農業後継者が大事だと言いながら、ほとんど国は何もやってこなかった。

 これを言うと、そんなことまでしていたのかと叱られる可能性もあるが、民主党政権は直接支払いも含め、そこそこ農政にいいことをやっている。なかでも画期的なのは青年就農給付金。150万円を5年間出して、今は東京でも地方にいてもいいから、5年の間に経営基盤を作ってもらうという制度。これは菅さんがエコロジストで農業をなんとかしなきゃという気持ちを持っていたからできた。フランスでもやっていて、ものすごく成功している。

石川: それは今の安倍政権になっても引き継がれていますか?

篠原: 引き継がれている。こう言うと手前味噌になりますけど、社会保障に関して障害者対策は我々民主党は相当やりました。だけどさんざん改革すると言った年金や医療はなかなか難しくて進まなかった。政権にカムバックした自民党の議員数人が「篠原さん、農政は我々ができないことを、ちゃんと改革してくれたんですね。新しいことをやってくれていたんですね」と言ってくれました。その代表が直接支払いと青年就農給付金です。

石川: なるほど。やっぱり大事なのは後継者問題なんですね。TPP対策という名目で何かをやろうとする時に必ず出てくるのが株式会社の参入で、その議論をすると、うまくいかなかった時に、ソロバン勘定ですぐに撤退するようなビジネス優先の企業では困るという話になる。

 でも、株式会社であれ、NPOであれ、本当に日本の農地を守って日本の農作物を作るということになると、大切なのは参入障壁をなくすという意味での自由化ではないんじゃないですか。

篠原: そうだと思います。後継者問題について自民党は、農家に生まれた人には補助する必要はないと言います。何を馬鹿なことを、と私は思います。農家で生まれて育っても、採算が合わなくてやっていけないからと仕方なしに都会に出ている人、あるいは家にいながらどこかで勤めている人はたくさんいます。

 農家とはまったく関係なくて、初めて農業に参入したいという人をシャットアウトする必要はないけれども、まずやるべきなのは、農村・農家で生まれ育ったのに農業には従事していない人たちに、農業に戻ってもらうことです。

石川: そのための政策を、前の民主党政権や今の自民党はやろうとしているんですか?

篠原: それが青年就農給付金。

石川: それ1個だけでしょ。こういうのってトータルでやっていかないとダメじゃないですか。

篠原: 人・農地プラン(地域農業マスタープラン: 農地集積による規模拡大、若者の新規就農の促進)というので、そういう人たちに農地を集めてやってもらうようにやり始めている。ただ、あんまり理想的なことばかり言うと、農地をいっぱい集めなかったらダメだとか言うことになりかねないので、周りがバックアップしないとダメなんです。

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