「徹底討論TPP~日本の農業は壊滅するのか、生まれ変わるのか」
2013年4月25日19時30~放送分 【第2回】

[左から] 鈴木宣弘さん(東京大学大学院農学生命科学科教授)、篠原孝さん(民主党衆議院議員)、石川和男さん(政策家/社会保障経済研究所代表)
※この原稿は、4月25日19時30~行われた「政策講談」第3回を書き起こしたものです。書き起こしにあたっては、読みやすくするために必要最低限の編集を行っています。

【第1回】はこちらをご覧ください。

「ダメなら席を蹴って帰ってくる」なんて本当にできるのか?

石川: 野田さんは11月14日に安倍さんとの党首討論で「明後日解散しよう」とおっしゃって、実際16日に解散して12月16日に総選挙。それにしても、野田さんは解散をいつ決意したんですかね。

篠原: これははっきりしているんです、11月2日なんです。こんな話は墓場まで持っていかなければいけないのに、鍛錬ができていない藤村修官房長官が毎日新聞のインタビュー記事で、11月2日に自分と野田総理と岡田克也副総理の3人でこっそり解散について話したと、ぺらぺらしゃべっているんですよ。どうしようもない。

石川: ありゃりゃ。こっそり話したって(笑)、しゃべっちゃダメでしょ。

篠原: 1月24日と25日の2日間にわたって独占インタビュー記事が載っているんですから、あきれてモノも言えない。ほとんどの議員にとって本当に寝耳に水で、マニフェストも何も作っていないから大慌てです。おかげで同僚議員は、みんな討ち死に。野田さんがどうして今でも議員をやっていられるのか、不思議で仕方ない。党首を辞めただけじゃなくて、議員も辞めなくてはいけない。 

石川: 確かに、あのタイミングで解散した野田さんの決断には、民主党のみなさんは怒り心頭でしょうね。とはいえ、その後、株価が上がり、為替は円安になり、景気は良くなり始めている。これは今日の話題ではないですけど、こうした経済の動きは民主党政権に対する裏返しのように私は思う。

篠原: それはあるでしょうね。安倍さんは大したものだと思います。ただし、口先だけですよ、今のところ。予算委員会では「アベロ(舌)ノミクス」と安倍さんに皮肉を言ったんですが、口先だけでここまで経済を動かすのは大したものです。でも、しょせん為替とか株価は口先だけで動く虚業の世界です。気持ちで動く。

 それに対して、農業の世界は違う。いくら安倍さんが「はっと息を呑むような美しい田園風景を守る」なんてきれい事を言っても、誰かが守ってくれるわけじゃない。株や為替の分野は大功績で大変結構ですが、それですべてうまく行くと思ったら大間違いです。安倍政権はTPP交渉に参加すると決めたのに、農政改革には何ひとつ手をつけていない。

 菅政権では「交渉に参加するかどうかを検討する」という段階で「食と農林漁業再生推進本部」を作り、改革に着手していました。安倍政権がやっていることと言えば、産業競争力会議に農政のことなんて何もわからないメンバーを集めて、勝手なことをぶちまけているだけじゃないですか。これは大混乱で、無責任極まりない。

石川: だけど、林芳正農水大臣は「攻めの農林水産業推進本部」を設置して、産業競争力会議に資料も提出しています。その資料を見ると、農業の競争力について農水省が一生懸命に取り組み始めるのかな、という意欲も見えているように思う。

 鈴木先生、交渉参加が決まった以上、前向きに考えていかなくてはいけないじゃないんですか。

 前向きというのは、譲るばっかりではなく、こういう風にすべきだ、ここまでは認めるけどここから先はダメだというような原則をはっきりさせて、これまでの絶対反対路線から方針転換しないと、なかなかうまく行かないのでは、と思うんですよ。これは農業に限らず、自動車産業などの製造業も同じだと思いますけど。

鈴木: アメリカの場合は議会通知後90日間の議論が必要とされていて、それを経て承認されるとすると、7月末に交渉が始まる。その時に農産物の聖域、つまり今まで関税撤廃の除外対象としてきた5品目(コメ、麦、牛・豚肉、乳製品、甘味資源作物)を本当に守ることができるのか。

 林大臣はNHKの『日曜討論』で、私の質問に答えて、もしも除外することが無理だとわかったら、その時点で「席を立って帰ってくればいいんだ」とおっしゃった。最終的にサインしなければいいと。そういう可能性だってあるんだと、そこまで言われたわけですよね。でもね、本気でそんなことをするつもりがあるのかというと、かなり怪しい。

石川: 実際は、その場で席を蹴っ飛ばしてバイバイというわけにはいかないでしょうね。難しいと思うな。

鈴木: そうですよね。じゃあ、さっきも話が出たように、最終的に国会で条約を批准する段階で、本当に拒否するのか。それだって、何らかの理屈をつけてごまかしてしまおうと考えていることが、ありありとわかる。だから、本当に交渉が始まれば、あそこまで言った人たちがどのようにけじめをつけるつもりなのかが、まず問われる。政治家としてあそこまでの覚悟を示したんですから、それが見せかけでないことを証明してほしい。

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