「安倍政権は本当に日本を救えるのか」
Part 3 日本の「アベノミクス」は、経済再生に向けた土壇場の賭け

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Part 3
日本の「アベノミクス」は、経済再生に向けた土壇場の賭け

安倍晋三首相の「リフレ」経済政策、つまり需要増大を刺激し消費支出と企業投資の増大という好循環を生み出すという取り組みが本当に成功するかどうか、エコノミストたちの見解は分かれている。専門家のあいだには、日本が持続可能な成長を実現するには、さらに深刻なリセッションに耐え抜くしかないとする考え方もある。そのためには、減少と高齢化が進む人口構成、産業の競争力低下といった長期的な問題に対処する構造改革を行わざるをえないかもしれない。だが、安倍首相のイニシアチブが成功すると見る慎重な楽観派も存在する。

 「アベノミクス」は真珠湾攻撃の決断にも喩えられている。起死回生の一撃を試みる、大胆な実験だ。去る12月末に就任した日本の安倍晋三首相が主唱する金融・財政・改革政策の組み合わせは、日本の主要貿易相 手国と世界銀行からは賞賛を浴びた。だが、果たしてうまく行くだろうか。

 長年にわたって政権の座にあった自由民主党(自民党)のリーダーとなった安倍は、ただちに、20年にわたる経済不振から日本を脱却させることを狙った積極的な金融緩和と財政出動という政策プラットホームを発動した。日本経済の衰退には、消費と投資を阻害し、賃金と成長の足枷となるデフレが伴っていた。

 7月に控える参院選での躍進を確実なものとするために、安倍は手っ取り早い成果を必要としている。参院選に勝利すれば、経済改革を進めていくため、またそれ以外の保守的なアジェンダに関する優先課題に取り組むために自民党が必要としている有権者からの信任が得られるからだ。

 まだ最終的な結果を云々するには時期尚早ではあるが、これまでのところ、アベノミクスの結果は功罪相半ばである。最も重要な金融緩和措置の一部については、4月まで最終的な承認が得られなかった。

 だが円相場は、昨年秋、政府が経済政策の新たな方向性を発表して以来すでに軟化しつつあり、昨年10月の1ドル77円前後から、最近では1ドル100円を越えるまで下がっている。そのおかげで、日本の輸出企業の競争力をさらに損なっていた円高の呪縛に終止符が打たれた。

 4月、株価は5年ぶりの高値をつけた。景気の回復と、トヨタやソニーなど大手輸出企業の業績回復を期待した投資家が市場に殺到したためである。

リセッションは終わったのか

 日本は昨年暮れに徐々にリセッションから脱却し、回復基調に移った可能性がある。それでも、「リフレ」経済政策により需要増大を刺激し、消費支出と企業投資の拡大という好循環をもたらすという安倍首相の取り組みが実際に成功するかどうか、エコノミストたちの見解は分かれている。

 専門家のあいだには、日本が持続可能な成長を実現するには、さらに深刻なリセッションに耐え抜くしかないとする考え方もある。そのためには、減少と高齢化が進む人口構成、産業の競争力低下といった長期的な問題に対処する構造改革を行わざるをえないかもしれない。だが、安倍首相のイニシアチブが成功すると見る慎重な楽観派も存在する。

 ここ数年、無駄な公共事業の責任を問われてきた自民党は、長年にわたり、断固たる財政政策に依拠してきた。つまり、公共事業を通じた財政出動による需要刺激である。だが、利益誘導的な支出だけで経済を太らせるだけで成功するのであれば、日本経済はとっくの昔に回復していたはずだ、と一部のアナリストは指摘する。

 同じように、これまでは金融緩和も失敗に終わってきた。何年にもわたってほぼゼロ金利の状態が続いたが、成長を加速するために必要な投資ブームは誘発されなかった。そこで安倍首相は、表向きは自律性を有するはずの日本銀行(日銀)に圧力をかけ、2年以内に2%のインフレ目標を達成することを約束させた。

 このアプローチを支持する者たちは、さらに、白川方明前日銀総裁(昨年3月に辞任)による金融緩和政策は迅速さ・大胆さに欠けていた、またその前任者らは経済が十分な刺激を受ける前に金融緩和策の解除を急ぎすぎた、と主張している。

 前任の白川に代わって日銀総裁に就任した財務省出身の黒田東彦は、4月、2%のインフレ目標を達成するため、日銀による資産買い入れを拡大してマネタリーベース(流通現金+日銀当座預金)を倍増させる計画を発表して国内外の多くの者を驚かせた。また黒田は、金利目標に基づく市場オペレーションの実施ではなく、物価またはインフレ率の目標が日銀の政策を左右するだろうと宣言した。

 黒田は、彼の目に「臆病な金融政策」と映る日銀の政策に常々批判的であり、彼が日銀を導きたいと考える全般的な方向性は就任前から明らかだった。それにもかかわらず、彼が推進する金融緩和のスタンスがあまりにも積極的だったことは、観測筋にもやや驚きを与えたのである。

 日銀は現在、長期金利の引き下げと「価格の安定性」を確実に実現するため、これまでよりも多種類の資産を購入しており、長期国債(最長40年満期)の購入も増やしている。また日銀は、ETF(上場投信、指数を追跡する)と日本国内の不動産投資信託(REIT)の購入も計画している。

 黒田総裁は計画発表に際して「これは質量双方の面で、まったく新しい次元の金融緩和だ」と話している。金融市場への影響はすぐに現れた。この日、ベンチマークとなる日経平均は2.2%上昇し、外為市場ではドルの対円相場が3円も上昇した。

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