Wharton Japan Report

「安倍政権は本当に日本を救えるのか」
Part 2 グローバル化に及び腰の日本の金融機関

2013年05月24日(金)
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〔PHOTO〕gettyimages

Part 2
グローバル化に及び腰の日本の金融機関

近年まで、とことん保守的なアプローチとバラバラな企業目標のせいで、日本の金融機関が海外への事業拡張を成功させることは難しかった。日本の銀行、保険会社、証券会社は、真のグローバル企業になれるのだろうか。

  1980年代末の黄金時代以降も、日本の金融機関が野心を失ったわけではない。だがそれでも、彼らが真の意味でのグローバル企業になったことはない。今日も、1980年代・1990年代と同様に、日本の銀行・保険会社・証券会社は海外への事業拡張を続けている。国内のクライアント企業の後を追い、縮小する 国内市場よりも収益性の高いビジネスを見つけるためだ。

 かつての国際事業は、金融各社が1990年代に買収した企業をほとんど売却したことにより、ほぼ消滅した。東京海上グループや三菱UFJフィナンシャル・グループなど、グローバルな成功を収めた少数の金融サービス企業でさえ、いまだに真のグローバル企業とは言えず、東京本社の取締役会・経営上層部に外国人を加えたことは一度もない。

 金融界の専門家は、日本の金融機 関がグローバリゼーションに苦労する理由として、語学力の不足や、異質なもの・外国のものを受容し対応することを躊躇する非常に閉鎖的な文化など、さまざまな要因を挙げる。日本と西側諸国のあいだで金融機関の給与水準に非常に大きな差があることも、日本の金融各社が外国の人材を獲得・維持することを困難にしている。

 一橋大学大学院国際企業戦略研究科の安田隆二教授によれば、「日本企業によるM&Aの失敗の多くは、日本企業の幹部が現地の経営陣をうまく操る能力を欠いていたせいだ」という。

 世界のやり方に適応する器用さがこれほど欠けているというのは、人によっては意外に思うかもしれない。何しろ世界のトップ自動車メーカーの一つであるトヨタは、一流の自動車と製造プロセスを輸出しているのだ。日本のサービス部門は多くの点で、特に、好みのうるさい顧客の要求を細心の注意を払って予期するという点では、世界随一である。

さまざまな長所

  だが、そうした品質や細部へのこだわりは、金融部門には適用されないようである。たとえば、日本の巨大証券会社・投資銀行である野村證券、それに保険会社の日本生命などは、海外における効果的な営業活動に失敗している。中小規模の地方銀行も含めて、日本の金融機関がアジアなど海外で事業を拡大している昨今、今回こそ彼らが成功を収め、真のグローバル企業になる期待は持てるのだろうか。

 東京海上グループは、海外における事業拡張で大きく 前進した数少ない日本金融機関の一つである。この成功をもたらした重要な要因の一つは、東京海上が米国、欧州、アジアで経営の現地化(ローカライズ)を決断したことである。三菱UFJフィナンシャル・グループも同じように、もう20年以上も米国でユニオンバンカルを経営している。

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