佐藤優インテリジェンス・レポート
「在沖縄米軍兵士への風俗活用をめぐる橋下徹大阪市長の発言が日本の国家統合に与える影響」

はじめに
橋下徹大阪市長の慰安婦問題と在沖縄米軍兵士への風俗施設利用を奨励する発言と飯島勲内閣官房参与の電撃訪朝が日本の外交環境を急速に変化させています。安倍政権は、日米関係には自信を持っていますが、米国の日本に対する目つきが急速に悪くなっています。今号の分析メモを読んでいただけば、問題の所在がはっきりすると思います。 

分析メモ(No.31)「飯島勲内閣官房参与の訪朝と日米同盟」

【重要ポイント】

橋下徹大阪市長の慰安婦問題並びに在沖縄米軍人への風俗施設利用奨励発言によって、米国の政治エリートが「米国と日本は価値観を共有できるのか」という疑念を抱き始めている状況で、飯島氏の訪朝がなされたことが日米同盟に与える悪影響を安倍政権は過小評価している。

【事実関係】

5月14~17日、飯島勲内閣官房参与が、北朝鮮(朝鮮民主主義人民共和国)の平壌を訪問し、15日、国際関係を統括する金永日(キム・ヨンイル)朝鮮労働党書記(党国際部長)と会見した。

【コメント】
飯島勲氏 〔PHOTO〕gettyimages

1.
飯島氏の訪朝の目的並びに同氏と北朝鮮要人との会談の内容は明らかにされていない。ただし、5月18日、訪問先の大分市内で、安倍晋三首相が、「飯島参与からは菅義偉(すが・よしひで)官房長官が話を聞く。必要があれば、直接話を聞く」と述べた。これは、飯島氏の訪問に安倍首相がコミット(関与)していることを、対外的(特に北朝鮮)に示す重要なシグナルである。この発言によって、北朝鮮、米国なども、安倍首相が対北朝鮮外交を政治主導で開始したと受け止めることになる。

2.―(1)
朝日新聞は、情報源を示さずに、今回の飯島氏の訪朝が安倍首相と菅官房長官の主導によるものであると断定する。

飯島氏の訪問を主導したのは首相と菅氏だった。訪朝直前、首相は飯島氏に「随行員と重要なやりとりをするときは必ず筆談で行うように」と指示。北朝鮮側に盗聴されないよう注意を促すなど心を配った。そして首相と菅氏はこう言って送り出した。

「今回は相手が何を望んでいるのか、まずはそれを聞き出してきてくれ」

もともと首相は対北朝鮮強硬派で、「普通の国ではない。普通に話し合っても問題は乗り越えられない」という北朝鮮観を持つ。これまで一貫して「圧力」に軸足を置いてきた。
小泉内閣の官房副長官時代の2002年には小泉純一郎首相(当時)の訪朝に同行。一時帰国した拉致被害者5人を北朝鮮に引き渡すことに反対し、北朝鮮の反発を買った。今年4月のケリー米国務長官との会談では「交渉のたびに裏切られたことを忘れないでほしい」と忠告した。

一方、安倍首相は拉致問題解決への思い入れも強い。昨年末、拉致被害者の家族会と面会し、「もう一度首相の職に就いたのも、拉致問題を解決しなければならないという使命感からだ」と説明。思いを同じにする盟友の古屋圭司氏を拉致問題相に起用した。

だが、北朝鮮はミサイル発射や核実験を繰り返し、拉致問題を議題にする日朝交渉は再開の糸口もつかめない。高齢化が進む被害者の家族からは「圧力だけではなく対話も」という切実な声が届き、首相周辺は「時間はない」と焦りを見せていた。

そんな折、北朝鮮側が小泉元首相の政務秘書官として日朝交渉に関わった飯島氏を受け入れる意向を伝えてきた。「米国の拉致問題への関心は核・ミサイルほど高くない。核開発問題を解決したら置き去りにされかねない。日本が主体的に取り組むしかない」。そう思い定めた首相は、圧力が弱まっても拉致問題解決を探る対話に踏み出した。>(5月19日『朝日新聞デジタル』)

2.―(2)
この朝日新聞の記事における、

訪朝直前、首相は飯島氏に「随行員と重要なやりとりをするときは必ず筆談で行うように」と指示

首相と菅氏はこう言って送り出した。

「今回は相手が何を望んでいるのか、まずはそれを聞き出してきてくれ」

「米国の拉致問題への関心は核・ミサイルほど高くない。核開発問題を解決したら置き去りにされかねない。日本が主体的に取り組むしかない」。そう思い定めた首相は、圧力が弱まっても拉致問題解決を探る対話に踏み出した。

のカギ括弧内の発言がこの朝日新聞の記事の重要性を示す鍵になる。なぜなら、カギ括弧とは、情報源が話した内容を正確に再現する場合に用いられる。特に朝日新聞の場合、カギ括弧の使い方は厳密だ。そのことから推定すると、情報源は、安倍首相、菅官房長官、飯島内閣官房参与のいずれかに絞り込まれる。それならば、朝日新聞が「飯島氏の訪問を主導したのは首相と菅氏だった」と断定するのも合理的である。

3.
飯島氏の訪朝を北朝鮮が受け入れた意図については、日米韓、さらに日米韓中露の間を分断し、北朝鮮外交のマヌーバー(陽動)の範囲を拡大することだ。・・・・・・(以下メルマガをご覧下さい)

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