安達誠司「講座:ビジネスに役立つ世界経済」

「講座: ビジネスに役立つ世界経済」
【第5回】 ~近くて遠い米国出口政策 1937年の教訓とは?~

2013年05月23日(木) 安達 誠司
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〔PHOTO〕gettyimages

 このところ、市場関係者の米国経済の見通しは、強気、弱気の2つに分かれている。強気派は、主に株式市場の活況(NYダウなどの史上最高値更新など)からFRB(連邦準備制度理事会)の「出口政策」が前倒しされる可能性を指摘する。一方、弱気派は最近の経済指標の弱さ(特に企業センチメントに関する指標)からFRBによる追加緩和の可能性を指摘する(さらに米国政府による緊縮財政の影響を懸念する向きもある)。

 ただし、米国市場は総じて堅調に推移しており、史上最高値の更新が続いている。FRB高官の出口政策に対しての前向きな発言は流動性の縮小といったネガティブなニュースとしてとらえられている訳ではなく、むしろ、株価の短期的な調整をもたらすことで、絶好の買い場を提供し、株価の上昇トレンド維持に貢献しているようにみえる。

 株式市場の反応はさておき、実際の米国経済の状況はどうなのだろうか。筆者は、強気派でも弱気派でもない。FRBによる出口政策は当面封印されると考える(すくなくとも現時点でFRBが提示する2015年まで現行の政策を維持するという考えは変わらないだろう)。その一方、景気の失速もなく、これまでの緩やかながら着実な回復も続くであろうとも考えている。すなわち、FRBは現行の量的緩和スタンスを変更しないまま、景気は緩やかに回復を続けるという状態が当面続くという見立てである。

FRBが出口政策を急がない理由

 ところで、FRBにとっての政策目標は、2%のインフレ率の維持と6.5%の失業率の実現である。現在、コア消費者物価指数は前年比+1.9%で昨年7月以降、ほぼ2%で安定している。一方、完全失業率は順調に低下しているものの、4月時点で7.5%と、目標の6.5%よりも1%高い。リーマンショック後のピークから現時点までの回復ペースが維持されると仮定すると、目標の6.5%に到達するのは、約1年半後の2015年前半になると試算される。

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