これがアベノミクス「機動的な財政出動」の現実なのか!? 住民無視で着々と進む現代版「万里の長城」を歩いてみた
この工区だけで南北に3キロも延々と続く巨大堤防 (宮城県岩沼市)

 冷たく無機質なコンクリートの巨大な壁が海岸線に沿ってどこまでもまっすぐに屹立している。数十年に1度、あるいは数百年に1度という頻度で荒れ狂う海と闘うために、そこに海があることさえ頑なに拒絶しようとしているかのようだ。さしずめ現代版「万里の長城」といったところだろうか。人は技術によって自然を屈服させることができるのだ、と天に向かって叫んでいるようで、そら恐ろしくなる風景である。

 東日本大震災の巨大津波が襲った東北地方沿岸で、いま、粛々と「巨大堤防」の建設が進んでいる。やっとの思いで復興を遂げた「ゆりあげ港朝市」(宮城県名取市閖上)の取材に行った際、朝市で偶然出会った建築家はこう言った。

 「堤防見ましたか。涙が出ますよ。あんなものをどんどん造ってしまって、いいんでしょうか」

 建築家の案内で現場を見に行くことにした。巨大堤防の計画については、以前このコラムでも取り上げたことがあったからだ。 地元の根強い反対にもかかわらず、国の事業として着々と建設が進んでいることは知っていた。

「静岡から四国・南九州までこんな壁を造る気かも」

 閖上から車で南へ20分ほど。仙台空港の南に位置する岩沼市寺島。防潮林として整備されてきた松林を抜けると、その「壁」がみえてきた。高さ7.2メートル。もちろん、その先にあるはずの海はまったく見えない。空の高さに人工物の高さは遠目には実感できないが、歩を進めるに従って、その巨大さが心に重くのしかかってくる。日曜日の早朝とあって、誰ひとりいない。

 堤防の上に登ってみた。頂上部の幅は3メートルぐらいだろうか。海に並行してどこまでもまっすぐ伸びている。この工区だけで3キロにわたる巨大な壁が作られている。

被災地で建設が進む巨大海岸堤防 (宮城県岩沼市)

 震災の巨大津波によって東北沿岸にあった大きな堤防は軒並み壊された。そんな"反省"から、堤防の高さを積み増すだけでなく、堤防斜面の傾斜を緩やかにした。国交省の予算書などには「海岸堤防の粘り強い構造での整備」とうたわれている。

 津波に対して「粘り強い」ということなのだろう。素人目には傾斜がゆるやかで、波を防ぐことはできずに、波が堤防を乗り越えていくのではないか、とすら思える。それでも堤防は壊れずに残る「粘り強さ」があるということか。

 「放っておいたら、国交省はこんな堤防はどんどん作ります。南北に延びていきますよ。岩手から千葉まで。いや、最近は東南海地震の巨大津波の危機感が煽られていますから、静岡から四国・南九州までこんな壁を造る気かもしれません」

 建築家はそう言うと、海のかなたに目線をやった。

 緩やかな斜面にした結果、基盤部の幅は30~40メートルになっているだろう。日本の海岸線はすべて壁でおおわれるのか。もはや白砂青松という麗しい日本語は死語になるのか。

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