フジテレビの社長交代劇は、テレビ業界の変質を表すシンボリックな出来事なのかもしれない
〔PHOTO〕gettyimages

 フジテレビの新社長に現常務の亀山千広氏(56)が就任する。5月15日にフジから正式発表されたが、朝日新聞が同14日付の朝刊で1日早くスクープした。

 朝日の一報が経済面ではなく、第二社会面のトップだったことが、亀山氏の知名度と話題性の高さを表していた。企業のトップ人事としては破格の扱いだ。

 亀山氏の実績については既に報じられている通り。『踊る大捜査線』などをプロデュースし、次々と大ヒットさせた。つい先日、5月18日の『土曜プレミアム』(午後9時)で放送された2012年制作の映画『ライアーゲーム-再生-』を制作したのも亀山氏だった。視聴者が身近に感じられるトップの誕生と言えるだろう。

コンテンツ制作を一義的に考える新体制

 フジの地上波の視聴率が3位に落ちた中のトップ交代劇だけに、亀山氏の登板は視聴率浮上が狙いと受け止められているが、それだけではないだろう。フジという組織が、自社のコンテンツ制作能力の重視を鮮明に打ち出した表れと見るべきだ。

 テレビは物づくり業界の一つで、制作畑は花形だが、そこから生まれたトップは意外なくらい少ない。日本テレビの大久保好男社長は読売新聞出身だし、TBSの石原俊爾社長は編成畑、テレビ朝日の早河洋社長は報道が長かった。テレビ東京の島田昌幸社長も日経新聞出身だ。

 テレビ業界は総務省の監督下にある免許事業であり、政治的圧力を受けることもあることから、トップは否応なしに政官界との付き合いや交渉力が求められ、生粋の制作マンには不向きとされる側面があった。

 また、視聴率を左右するのは編成部門や制作部門だが、スポンサーを探してきて実際に金を稼ぐのは営業部門という独特の産業構造もあることなどから、トップには社内を360度的に見てきた人物が向くという判断基準もあった。

 けれど、テレビ業界は激変期にある。地上波だけの競争ではなくなり、各局はBSやCS、ネットなどに進出し、さらに映画も制作しており、総合的な事業で収益を上げるメディア・コングロマリットになっている。地上波の番組だけ制作していれば良い時代が終わると、カギを握るのは、コンテンツの制作能力だ。

 極端な話、世の中から地上波が消えようが、制作能力さえ長けていれば生き残れる。BS局やCS局、あるいは映画会社になってしまえばいいのだから。出版社にとって、この世から紙が消えようが、読ませる力さえあれば、電子書籍に活路を見出せるのと同じ理屈である。

 メーカーに国際畑のトップが誕生すれば、海外展開に力点を置くことの表れであるし、技術畑のトップが就任すれば、開発力の強化を目的としたものと見ることができる。亀山氏がトップに就いたのも同じ理屈で、フジはコンテンツ制作を一義的に考えるということを社内外に示したことになる。

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