東大で熱く語ったメッセージ
「君らが真のエリートでリーダーであるならば、人生を他者に捧げよ」

2013年05月21日(火) 田村 耕太郎

世界を知らずに悩んでいた東大生たち

 東大の学園祭「五月祭」で講演する機会をいただいた。タイトルは「決断の技法」。「休学を考える」というテーマのシンポジウムの締めの講演であった。

 楽しいイベントが盛りだくさんの学園祭の中で、けっこうシリアスなテーマなので、人が集まるかどうか、やや心配ではあった。しかし会場には300名以上の、東大生をはじめとする意識の高い若者が集まった。一言で言えば、私は講演で「東大生よ、君らの若さで恐れるリスクはないから、思うまま生きよ」という具合に、思い切り彼らの背中を押した。

 私の出番の前の、休学経験のある登壇者と会場のやり取りを聞いていて、天下の東大生でも休学をリスクと考える人が結構いる様子に驚いた。会場には、東大を目指す浪人生も来ていて、「僕は浪人しているのでもう休学はできません。休学しないで立派になった人を知りませんか?」と質問していた。

 そのとき、主催者が私を見つけ、「田村さんは休学されていませんよね。田村さんがいい例です。田村さんは休学どう考えますか?」と振ってきた。私は「休学がリスク」などと考えたこともなかったので答えに窮したが、「君らの時代には平均寿命が100歳を超えるはず。1年くらい、どうってことはないよ!」と真顔で答えたところ、会場は一瞬驚き、笑いが起こり、拍手をいただいた。

 そして、私の登壇となった。当初、世界情勢の話は最後にしようかと思っていたが、東大生ともあろう者が、休学や浪人で悩むくらい世界を知らない様子なので、私が最近見てきた世界の事例から話を始めた。

東大を出ても、安定などまったく保証されない時代

 「皆さんの中には、『東大に入って4年で卒業する』というレールから外れるのをリスクだと考え、悩んでいる人がいるようです。だから土曜の夕方、ほかに楽しい催し物がたくさんある五月祭の中で、わざわざこのシンポジウムに来られているのでしょう。

 確かに、自分が大学生だったら、休学は大ごとかもしれません。でも、いろんな経験を積ませてもらった立場から言うと、『休学が何じゃ?』という感じです。

 皆さんと同世代で同じくらい優秀なアメリカ人の中には、『大学に行くこと自体がリスク』と考える人たちが出てきています。皆さんのような優秀なリーダー候補の中で、中高生くらいで起業して大学には行かない、という人が増えているのです。『22年間も実社会に出ない方がこれからの時代にはリスクだ』と思う人が出てきているわけです」




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田村 耕太郎

(たむら・こうたろう) 前参議院議員。エール大学上席研究員、ハーバード大学研究員などを経て、世界で最も多くのノーベル賞受賞者を輩出したシンクタンク「ランド研究所」で唯一の日本人研究員を務めた。
国立シンガポール大学公共政策大学院名誉顧問、新日本海新聞社取締役東京支社長。
1963年生まれ。早稲田大学卒業、慶応義塾大学大学院修了(MBA取得)。デューク大学ロースクール修了(法学修士)、エール大学大学院修了(経済学修士)、オックスフォード大学上級管理者養成プログラム修了、ハーバード大学ケネディスクール危機管理プログラム修了、スタンフォード大学ビジネススクールEコマースプログラム修了、東京大学EMP修了。
2002年から10年まで参議院議員を務めた間、内閣府大臣政務官(経済財政、金融、再チャレンジ担当)、参議院国土交通委員長などを歴任。
シンガポールの国父リー・クアンユー氏との親交を始め、欧米やインドの政治家、富豪、グローバル企業経営者たちに幅広い人脈を持つ。世界の政治、金融、研究の第一線で戦い続けてきた数少ない日本人の一人。
2014年8月、シンガポールにアジアの地政学リスクを分析するシンクタンク「日本戦略情報機構(JII)」を設立。また、国立シンガポール大学(NUS)リー・クワンユー公共政策大学院の兼任教授に就任し、日本の政府関係者やビジネスリーダーに向けたアジア地政学研修を同校教授陣とともに実施する。
著書に『君に、世界との戦い方を教えよう 「グローバルの覇者をめざす教育」の最前線から』などがある。