成果を出したアベノミクスの影で、国会運営と外交が安倍政権のアキレス腱となりつつある!
〔PHOTO〕gettyimages

 参議院環境委員長の川口順子氏が、自らが召集した委員会を反故にし、訪中日程を延期したため、国会の議決によって解任された。この件については、先週、この欄で詳しく述べておいた。彼女の行動は、まさに「重大な国益」を害する愚挙であった。その理由については、先週の拙稿を参照してほしいが、彼女を守ろうとした自民党もまた、高いツケを払わねばならなくなっている。

 15日には、参議院で予算案が採決されたが、賛成110票vs反対124票で否決された。先の補正予算は、1票差で可決されているから、本予算案も僅差で可決される可能性だってあったのである。それが、何と14票差での否決である。それをぶちこわしたのが、川口氏のルール違反である。

 自民党執行部の何人かに、解任決議前に、川口氏の首を切れと進言したのであるが、参議院は聖域だということで、何の行動もとらなかった。「重大な国益」とか、「中国要人との会談」とか、全く根拠のないことを理由に、前代未聞の不祥事を起こした川口氏を、自民党は賞賛してのけた。野党が怒るのも当然で、川口問題は、野党を結束させてしまったのである。

 わが新党改革も、川口氏の行動は許しがたいという判断で、解任決議に賛成した。是は是、非は非である。安倍内閣の高支持率を背景に、自民党は自信過剰になっているのではないか。円安、株高で、アベノミクスの成果が出始めているが、国会対策は、野党の主張をよく聞いて慎重に行う必要がある。それを怠ると、今回の本予算のような採決結果となるのである。

 我が儘な川口氏を守ることと、国会の運営、とりわけ本予算を参議院でも可決させることと、どちらが大事なのか。子どもが考えても分かることである。だから、解任決議前に彼女を辞任させよと自民党のリーダーたちに提案したのである。傲慢な国会運営をして得るものは、何もない。

ナショナリズム色を強めた安倍内閣

 予算の後は、衆議院選挙制度の改革、つまり0増5減が控えている。今の参議院の状況だと、予算案の二の舞で、否決されてしまうであろう。その場合、政府・与党は三分の二の多数で再可決するであろうが、これまた、強引だと批判されるであろう。この法案については、衆参同日選挙の可能性との関連もあり、政局にも影響を与えよう。

 憲法改正問題もまた、対応は容易ではない。とりわけ、改正手続きを定めた96条の改正(要件を、国会議員総議員の三分の二から二分の一に緩和)については、世論の反対が多い。安倍首相自らが、今は改正に国民が賛成しないだろうと語っているくらいだ。

 さらには、歴史認識の問題も一筋縄ではいかない。村山談話を「見直す」から「踏襲する」という路線転換も、中国や韓国、そしてアメリカからの批判を念頭に置いてのことであろう。

 憲法を改正したり、歴史認識を改めさせたりして、日本の本来の姿を取り戻そうというのは、安倍首相の悲願である。しかし、参議院選挙に勝つまでは、そのことは封印しておこうというのが、当初の目論見であった。しかし、4月28日に主権回復の祝典を行ったり、閣僚が靖国神社に参拝に行ったりして、ナショナリズム色を強めたことが、近隣諸国や一部のメディアの反発を買ったのである。

 本音を封印するのは難しい。しかも、憲法96条の改正や村山談話の見直しなどについて、本音とは異なる方向へ軌道修正したことは、節操がないという批判も招きかねない。

 内政は上手くいっているようでも、実は外交では黄信号が灯っている。中国との関係は悪化したままである。「重要な会談」を行ったはずの川口訪中も何の意味も持たなかった。それどころか、尖閣にとどまらず、琉球までも中国領だという論文まで出てくる始末である。川口氏の態度は、中国の属国が行う朝貢外交だったので、中国も日本など与しやすいと考えたのかもしれない。

 韓国の朴槿恵大統領は、アメリカの議会における演説で日本批判を展開したが、そのことに今の日韓関係の深刻さが象徴的に表れている。アメリカもまた、日本のナショナリズム回帰に懸念を表明している。飯島内閣参与の突然の北朝鮮訪問は、日米韓の連携を乱すものとして、ワシントンやソウルは不快感を示している。いま、外交が、安倍内閣のアキレス腱となりつつある。

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