スポーツ

プロ野球チャンスをつかめた男と逃した男
菊池雄星 鈴木大地 小川泰弘ほか
きっかけは些細なことだった

2013年05月22日(水) 週刊現代
週刊現代

 当たり前のことだが、どのチームも控え選手の方が圧倒的に多い。だからこそ、プロの世界は日々、熾烈を極めるのだ。つかむか、取り逃がすか。そして今日も、才能たちがチャンスをめぐり競い合う。

マウンドを見れば分かる

「ずいぶん遠回りしてしまいました。僕は本当に小さなステップで歩いてきましたから」

 西武の4年目投手・菊池雄星(21歳)は、今季に至るまでの自分のプロ生活をそう言い表す。

 7日現在、菊池は完封2つを含むリーグトップタイの4勝。防御率(0・85)でもリーグトップの成績を残し、首位をひた走るチームを牽引している。昨年まで3年間で8勝(4敗)だった菊池の今季の飛躍は、まさに「大化け」と呼ぶに相応しいものだろう。

 彼はいかにしてチャンスをつかんだのか。それを本人に問うと、こんな答えが返ってきた。

「いろんなことがありましたけど、チームの雰囲気に馴染めたことが大きかったです」

 確かに入団当初は「いろんなこと」があった。ドラフトでは6球団が競合。将来を嘱望されるが故に注目された黄金ルーキーは、否が応にも特別扱いとなり、いつの間にかチーム内でも浮いた存在になっていた。1年目に生じたコーチとの軋轢は、体罰問題にまで発展した。

「遠回りだった」—菊池は短い取材時間の間に、冒頭にも記した言葉を、何度も繰り返した。この3年間はそれほど、彼にとって技術的にも、精神的にも、長い試行錯誤の日々だったのだろう。

「(ドラフト)1位でライオンズに入って、キャンプ前からすごく注目されて、みんなすぐに活躍するものだと思ってもらっていたと思うし、自分でも自身の能力に期待していた部分がありました。でも思ったような結果も出なくて、ケガもあって。焦っていた時に、先輩たちに救われたんです」

 石井一久、岸孝之らとの合同自主トレには、一昨年から参加している。

「今季大きな武器になりかけているカーブも、岸との自主トレの中で様々なアドバイスを受けているそうです。雄星は素直で、時に聞き入れすぎるくらい、人のアドバイスに耳を傾けますから」

 と杉本正投手コーチは明かす。長年エースを張ってきた二人の投手の振る舞いは、すべてが菊池に学ぶ機会を与えてくれた。杉本コーチが続ける。

「ある日、石井が投げた直後のブルペンに雄星を呼んだんです。マウンドを見せるために」

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