雑誌
岩手の天才少年書道家と大震災

短期連載 早熟の才能は、どうすれば順調に育つのか「神童」たちの「その後」
無造作に筆を握り「桜」を書く。〔PHOTO〕船元康子書道家高橋卓也(14)

取材・文 太田あや(フリーライター)

 様々なジャンルで突出した「スーパーキッズ」たちは、思春期を迎え、「神童」と呼べなくなるほど成長した今、自分の才能、そして支える親とどう向き合っているのか。小学生時代に取材したライターが、再び彼らに会いにいった―。

「東北六魂祭2013」の開催を記念して「福」の一字を揮毫した(今年1月)

 2年半前、「天才少年書道家」と呼ばれていた高橋卓也くん(14)を取材した際、「最近は、取材のときしか字は書いていないんです」と訥々と語っていた。当時、小学6年生だった卓也くんは、「将来の夢は書道家」と言いながらも、彼の関心は、パソコンなど別のほうに向かっているようだった。だから、私は勝手に「数年後は、習字をやめているかもしれないな」と思っていた。

 しかし今、卓也くんの字は以前よりも求められ、卓也くんもそれに応えるように精力的に作品を書き続けている。それは、東日本大震災がきっかけだった。

  '11 年3月11日の午後、岩手県盛岡市の公立小学校に通っていた卓也くんは、卒業式の予行練習のため体育館にいた。そこに急に襲ってきた大きな揺れ。天井に

 積もった何十年分の埃が舞い落ちてくる中、卓也くんは冷静そのものだった。

「揺れが長いから、これは海溝型だ。マグニチュードが大きそうだから、大きな津波がきて、かなりの被害になるぞ」