現代新書
新しい支援と介護のありかたを
『「動かない」と人は病む――生活不活発病とは何か』著者・大川弥生インタビュー

5月17日に講談社現代新書で、『「動かない」と人は病む――生活不活発病とは何か』という本を出す医者の大川弥生さん。
あまり聞きなれない「生活不活発病」という病気ですが、どんな生活を送るかによって、誰の身にも起こる可能性がある病気です。この病気の対策を考えていくと、今の社会の抱える問題から人間が生きるという根本的なことまで考えなおすべきことがいろいろ浮かんでくるといいます。大川さんが本書でぜひ伝えたいこととは? 

新しい常識を

――この本では「生活不活発病」がテーマになっています。あまり聞きなれない病気ですね。

大川 生活不活発病は生活が不活発なことによって、体や頭のあらゆるはたらきが低下する病気です。東日本大震災で話題になったので聞いたこともあるのではないでしょうか? この病気は、高齢者におきやすく放っておくと寝たきりにまでなりかねないこわいものです。しかし本で2歳のお子さんの例を紹介しているように、誰にでも起こる可能性があります。

 もちろんどんな病気か知っていれば予防や回復させることができるものですが、知らないためにこの病気になってしまった人をたくさん見てきました。この病気は専門家だけで予防や改善ができるものではなく、本人や家族はもちろん社会全体の関わり方が大事なので、これからの高齢化社会の中ではいわば常識として知っていただきたいと思います。この本を書いたのは、まず生活不活発病を知っていただきたいからです。

 でもそれだけではありません。生活不活発病は名前の通り「生活」と深い関係にあるユニークな病気です。この病気について考えることで、病気になった時の療養の仕方、介護、リハビリテーション、そしてボランティア活動など様々な支援などで、それまで常識としていた色々なことについて考えなおすべきことがわかってきます。

 例えば、私は今回の東日本大震災だけでなく豪雪や豪雨なども含めいろいろな災害での被災地で支援活動をしてきました。そういった中で、善意からの支援であるにもかかわらず、もっとよいやり方があるということを知らなかったがために、結果的にはかえってマイナスにすらなるという例をたくさん目にしてきました。これはとても残念なことです。

 だから生活不活発病を通して、「生活」つまり「人が生きる」ということをよりよくするにはどうするかの考え方についての新しい知識を持ってもらいたいというのもこの本で伝えたいことです。ただ生活不活発病という病気を予防・改善するだけでなく、みなさんご自身や周りの人が健康で楽しく充実した生活を送るためにも役立つと思います。

――今の支援のありかたではどのようなことが問題なのですか?

大川 一般に支援をする上で、「何でもやってあげるのが一番いいことだ」という考えが強く染み付いているように思います。これは災害時においてだけではなく平常時においても、そして集団への支援だけでなく、個人的な1対1の支援としても、駅で困っている障害のある人など知らない人への支援、また自分の年老いた家族への介護やどう接するかなど、様々な場で見られます。しかし、これは大きな誤解です。

 支援を考えるときに、「やってあげるのがいいことだ」という考えを基本にするのではなく、「その人がその人らしく充実した楽しい生活を送ること」を大命題として頂きたいのです。そういった生活を実現するために支援にはどうすればいいのか。それを考えるのが支援の基本方針です。言われてみると当然のことかもしれませんが、「何でもやってあげるのがいいことだ」という考え方がこれも常識のように染み付いてしまっています。

 しかし常識だからといって、必ずしも正しいとはかぎりません。それを変えることができればと思うんです。今回の新書では、病気の後に段々と元気がなくなったり、歩けなくなった人、脳卒中で倒れた人、息子夫婦と同居して足腰が弱くなっている人など具体例を紹介して、その原因と予防・改善法を紹介しています。予防・改善は生活不活発病の場合には専門家だけでなく、家族や一般の方々も含めての接し方が大事です。これも支援です。この本を契機として、正しい支援のあり方が新しい常識として根付いてほしいと思います。

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