ブルーバックス
『東京鉄道遺産』
「鉄道技術の歴史」をめぐる
小野田滋=著

メニューページはこちら

明示・大正・昭和の貴重な鉄道施設を
専門家が解説!

 日本初の鉄道が開業した東京には、明治以来、数多くの路線が建設されてきた。そのため、あらゆる時代、あらゆる種類の鉄道構造物が集積し、今も鉄道輸送を支え続けている。本書では、東京の鉄道遺産を訪ねながら、その歴史や技術史的な見どころを専門的な視点で紹介。鉄道技術史研究の第一人者が執筆した、本格的な解説書。

はじめに

 明治維新とともに、江戸から名を改めた東京は、一国の首都にふさわしい姿に整備されることとなった。本書の主題である鉄道はもとより、道路、港湾、運河、水道、市場など都市としての機能を維持するためのさまざまな施設が、約一五〇年間にわたって建設されてきた。基本となったのは、江戸幕府から引き継いだ江戸の市街であったが、そこにさまざまな時代のさまざまな♯社会基盤施設(インフラストラクチャー)が地層のように折り重なって堆積しているのが、現在の東京の姿である。

 東京は、銀座大火や関東大震災、東京大空襲など大きな災厄にも遭遇し、そのつど復興を繰り返してきた。こうした災禍を乗り越えて、今なお現役で用いられている構造物は数多い。しばしば「そんな古い構造物を使っていて大丈夫なのか?」と質問されるが、すでに幾多の災厄をくぐり抜けてきた構造物なので筋金入りである。構造物の寿命は、「何年経ったから」ではなく、「現在も使用に耐えられるかどうか」で判断されるので、的確な検査や修繕が行われていれば、半永久的に使用し続けることができる。

 本書で紹介する構造物のほとんどは現役なので、「遺産」という言葉に違和感を覚える方がいるかもしれないが、後世に伝えるという意味での「遺産」であって、決して過去の「遺物」という意味ではない。最近は「世界遺産」の影響で「遺産」という言葉もポジティブに解釈されるようになったが、本書の「遺産」も同様の趣旨である。

 また、「全国」ではなく、「東京」に限定したのは、あらゆる時代、あらゆる種類の構造物がここに集積し、鉄道輸送を支え続けているからである。東京は明治時代に日本で最初の鉄道が開業し、現在に至るまでさまざまな路線が継続して建設されてきた。また、輸送量も多く、列車の運転も頻繁なので、これを支えるための工夫がなされ、一般の鉄道から、新幹線、地下鉄、路面電車、モノレールなどのさまざまな鉄道が発達している。

 鉄道構造物は全国に分布しているが、順番に建設を進めたこともあって地域によって時代や構造物の種類に偏りがある。昭和時代に建設された路線には煉瓦は用いられていないので、煉瓦構造物を見たい場合は、明治時代に建設された路線を調べなければならない。幸い、東京は明治時代から現代に至る鉄道構造物が網羅的に存在し、交通機関も発達しているので効率良く訪ねることができる。ただ、著名な名所旧跡ではないので、案内板や解説書があるわけではなく、せっかく訪ねてもどこをどう見れば良いのか、専門家以外にはわかりにくい。

 本書では東京の鉄道遺産を訪ねながら、その歴史や見所を専門的に紹介してみた。ここで取り上げた構造物は、すでに有名なものからあまり知られていないものまで千差万別であるが、いろいろな種類の構造物に接することによって、鉄道構造物に対する理解を深めていただければ幸いである。

著者 小野田滋(おのだ・しげる)
一九五七年愛知県生まれ。日本大学文理学部応用地学科卒業。一九七九年日本国有鉄道入社。東京第二工事局、鉄道技術研究所勤務を経て、分割民営化後は、鉄道総合技術研究所、西日本旅客鉄道(出向)、海外鉄道技術協力協会(出向)などを経て、現在は鉄道総合技術研究所勤務。NHK「ブラタモリ」にも出演。工学博士(東京大学)。著書に、『高架鉄道と東京駅(上)(下)』 (交通新聞社)、『鉄道と?瓦』(鹿島出版会)、『鉄道構造物探見』(JTB)など。
『東京鉄道遺産』
「鉄道技術の歴史」をめぐる
小野田滋=著

発行年月日:2013/05/20
ページ数:208
シリーズ通巻番号:B1817

定価(税込):1050円 ⇒本を購入する(Amazon)
          ⇒本を購入する(楽天)



 
(前書きおよび著者情報は初版刊行時点のものです)